コピーライターの糸井重里さんが社長を務める「ほぼ日」が、2017年3月に株式を新規上場(IPO)。幅広い世代に人気のウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」や「ほぼ日手帳」などで知られる同社の株式上場を支えたのが、取締役CFO管理部長の篠田真貴子さんです。

 篠田さんが「ほぼ日」の一員となったのは2008年のこと。入社前には、日本長期信用銀行(現・新生銀行)勤務、アメリカへの夫婦MBA留学、国際関係論の修士学位取得、マッキンゼー勤務など華々しいキャリアを順調に築いてきました。挫折知らずのエグゼクティブママという印象を受けますが、20代・30代は自分の居場所を探し、進む道を模索する毎日だったと振り返ります。

 自然体でユニークな個性が多くの人の心をつかむ「ほぼ日」メンバーと、経営マネジメントのプロとの化学反応、そして今回の上場の真意とは? 2児の母でもある篠田さんに、子育てとキャリアの両立に悩んだ過去やチームの持ち味を生かしたマネジメントの秘訣について聞きました。全2回でお届けします。

(上) 「ほぼ日」取締役ママ 模索したキャリアと子育て ←今回はココ
(下) 「ほぼ日」の母 子どもには多様な価値観があることを伝えたい

  

20代 ゴールが見つからず、人が褒めてくれることで満足していた

 これまでを振り返ると、正直なところ、はっきりと「自分がこれをやっていくんだ!」というゴールが見つからずに困って立ち止まることが何度もありました。

 大学卒業後、日本長期信用銀行に入ったのも、バブル期の就職活動で受けた企業の中で一番初めに内定が出たから。運も良かった部分もあったんです。当時、金融業界ではない希望もあったのですが、学生の私が狭い視野で卒業後の進路を考えるよりも、社会の第一線で活躍する大人が「来てほしい」と評価してくれるところで働いたほうがフィットするだろうと考えました。でも実際に働くようになると、自分にはあまり合わなくて……退社後、夫と共にアメリカへ留学をしてビジネススクールへ行きました。

「ほぼ日」取締役CFO管理部長
篠田真貴子

1968年生まれ、東京都出身。1991年に大学卒業後、日本長期信用銀行(現新生銀行)入行。1995年に退職し、アメリカへ留学、MBAと国際関係論の修士学位を取得。1998年マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパン入社、2002年スイス製薬大手のノバルティスファーマに転職。2003年第一子出産。2007年、所属事業部が食品世界最大手のネスレに買収されたことにより、ネスレニュートリションに移籍、第二子出産。2008年東京糸井重里事務所に入社、2009年株式会社ほぼ日取締役最高財務責任者(CFO)管理部長に就任。

 世界銀行で働きたいと思っていたのですが、実際に働いている人から話を聞くと、私が思っていたよりも官僚的なところがあって違うなと。これから先どうしよう、と思っていたときにビジネススクールで面接をしてもらえる機会があり、マッキンゼーからの内定が出たので入社することにしたんです。

 長銀にしても、留学にしても、マッキンゼーにしても、そうした一見華やかそうなキャリアを周りの人は褒めてくれます。そういった表面的なことで自分の自尊心が満たされるようなところが、当時は少なからずありました。20代のころは「この会社で私は何をしたいのか」という軸がなく自分が本当にやりたいことが見つからないまま、見た目のキャリアで、激しいモラトリアムをごまかしていましたね。

 マッキンゼーでは、クライアントの新しいプロジェクトを成功させるためのコンサルタントをしていましたが、当時上司から「あなたは何をやりたいの?」とよく問われました。最初のころは「まだ分かりません」という感じでも許されましたが、そんなに甘くはありません。年次が進むにつれて「昇格水準に達するスピードが遅いです。この遅れを取り戻すためには相当頑張らないといけないけれど、あなたは頑張れますか?」などとプレッシャーをかけられました。

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  • 30代 中間管理職としての明るい将来像が描けず、悶々
  • 夜遅くまで開いている保育園の近くに引っ越し。シッターも活用
  • 「24時間に1日のタスクが入りきらない」 ほぼ日に可能性を見出して

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