差をつけたいなら、「積み上げ科目」である算数をやらせよう

 RISUが科目を算数だけに絞っているのには理由があります。学校の勉強は「水平科目」と「積み上げ科目」というものに分けられます。水平科目は、例えば世界史。テスト前に出題範囲を集中的に勉強すれば100点取れる。でも、積み上げ科目の算数や英語、物理はそういうわけにはいきません。それまでの知識が積み重なって初めてできるものです。例えば掛け算ができなければ百分率の問題は解けません。国語は半分水平で、半分積み上げだといえます。例えば漢字問題は水平で「ここから100問出るよ」と言われてその範囲を勉強しさえすれば100点取れますが、読解や作文は積み上げになります。ただ日常生活での積み上げがある。

 算数は積み上げ科目なのでRISUで学ぶ意味があります。他の水平科目は5~6年生で勉強すれば受験にも十分間に合います。でも、中学受験では、算数1科目だけで他の全教科合計分くらい差がつき、その結果、偏差値でいうと10近く変わってしまいます。理社などは頑張っても点差がつきにくい。暗記能力ってそんなに変わりませんから、一朝一夕にはいかない算数で大きくリードしておけ、という考え方です。

 RISUはタブレット教材ですが、すべて丸投げ教材ではありません。RISUを使っているご家庭の保護者には、「この子はここまでできていますからこんなふうに褒めてあげてください」というメールを送っています。教科内容を教える「ティーチング」はRISUでできますが、学ぶ意欲を高める「コーチング」は家庭でやってもらっています。ですので、丸投げ教材だと誤解してメールを見ていない家庭では学習効果の平均が低いです。

 算数でこの子がどこでつまずいているかを突き止めるのは、統計のほうが得意です。子どもが何かのポイントでつまずいているときは、RISUで講師が解説するオリジナル動画を撮影して子どもに送っています。統計的に「この動画は効くな」ということを確かめているので、効率的です。ですが、それはティーチングであって、コーチングではありません。

 親の皆さんにしていただきたいのは、モチベーション・コントロールや、「なんで勉強するのか」を教えること。そして、一緒に遊ぶことも大事です。

 親には子どもの好きなこととか、伸ばしてあげたい面を考えながら「今度の休みの日にどこに遊びに行くか」とかを考えてほしい。算数の問題をやらせて採点して怒ったり、「次は子どもにどのドリルをさせればいいのか」などに貴重な時間を配分したりしないでほしいんです。そんなのはもう、機械に外注してくれ、と。その代わりに、子どものユニークなところを探し、伸ばしてあげてほしい。

 僕は図らずも中学生ぐらいから“Go Beyond the Rules”をやってきましたが、社会に出たとき、学校の先生の言うことをそのままやってきただけの人ではダメだと思うんです。コンサル時代の経験から、「人と同じような回答しかできない人」と「ユニークな発想ができる人」がいたら、これから会社で重宝されるのは後者だと断言できます。言われたことを、他の人と同じような発想でしか実行できないと、立場は厳しくなっていくでしょう。

 たとえ子どもが学校でいい点数を取って、将来いい大学に行けても、ユニークな発想ができずに、会社をクビになってそこから抜け出せなかったらダメなわけです。親世代は「学校の言う通りにちゃんとする」という価値観の中で教育を受けてきていますが、これからの時代、親は「子どものために本当に必要なこと」が何かを今まで以上に自分の頭で考えなくてはいけないと思うのです。

(取材・文/日経DUAL編集部 小田舞子、撮影/鈴木愛子)