GW中の土日、広島に出張したわたしは見つけたのである

 例年通り、家族で遠出といったことは一切せず、近場でチマチマと楽しんでいたGW中のカネコ家。ただ、最後の土曜日から日曜日にかけて、わたしだけが出張で広島へ行くことになった。

 広島といえば、魚は美味いわお好み焼きは美味いわ、ラーメンは美味いわで、わたしにとっては出張に行けて嬉しい都市ランキングのベスト3を堅持し続けている街である。ちなみに最近のお気に入りはホルモン焼きの「利根屋」で、「こうね」という広島でしか食べる習慣がなかったらしい牛の肩近辺の部位と、その脂をたっぷり吸った広島葱とのハーモニーは、甘さといい塩梅といい、ただただ絶品というしかない。もちろん、今回の出張でもダイエットを忘れてがっつり美味しくいただいた。

 となると、そこはかとない罪悪感を覚えてしまうのがわたしという人間である。

 つまり、自分だけが美味しいものを食べていると、家族に対して大変に申し訳ない気分になってしまうのである。このあたりが、たとえば取材で自分だけ銀座の寿司屋に行ってケロッとしているヨメとは決定的に違う。ともあれ、翌日の広島空港でわたしは家族のために何か美味しいものはないか、と必死になって探し回った。

 すると、あったのだ。ノドグロが。

 大ぶりの干物、1枚2700円。高い。だが、昨日の「利根屋」はあまりにも美味かったし、何より、東京の高級スーパーで見るものよりもプリップリな感じがする。やむを得ない。2枚買おう。ついでに、といってはなんだが、フグの一夜干しも買っておくことにした。ヨメが「あなたは昨日美味しいもの食べてきたんだから、ちょっと余分によこしなさいよ」と理不尽な要求を突きつけてきた際の保険である。言うまでもないことだが、そういう事態に陥った際、わたしに反論する権利は与えられていない。

 広島空港のお土産だけでなく、羽田空港の空弁屋さんで「たいめい軒」のしょうが焼き弁当、「今半」のすき焼き弁当、さらにソースカツ弁当を買い込み、わたしは帰宅した。待っていたのは感謝の言葉ではなく「帰ってくるのが遅すぎてお腹すきすぎちゃった」というお小言だったが、前日、阪神が胸のすくような、というか球史に残る0-9からの大逆転を演じていたことに意識を集中させて乗り切る。

 ちなみに、ダイエットのためにお弁当の上っ面だけをいただいたこの日の午後も、阪神は勝った。素晴らしい。実に素晴らしい。12年ぶりにして虎にとっては生まれて初めてとなる阪神の優勝が早くもチラつき始める。

 かくして迎えた夕げの時。すでに風呂をすませ、冷やしたグラスに酒も注いだ。迎撃態勢は万全である。そこに、オーブンで炙られた本日の主役の登場となった。

 実に、お見事。