SNS上で保護者自身が声を上げることに意味がある

※写真はイメージです
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 では結局、組体操は現在どうなったのでしょうか。

 実は誤解を受けることもあるのですが、私自身は一貫して、組体操そのものが必要ないとは言っていません。「つきもの論」の話をしましたが、巨大な組体操のリスクは、「ケガはつきもの」という範疇を超えた危険なものだったため、リスクを低減しなければならないと伝えてきました。

 そしてこれを誰より理解していたのが、保護者の皆さんでした。やがて保護者の皆さんがSNSで問題を提起し、こうした発言や実際の事例が様々なメディアで取り上げられるようになり社会問題になりました。世論が変わってきても、当初、教育現場である学校は巨大な組体操をすばらしいものととらえて続けてきていましたから、なかなか方向転換できませんでした。一方で、養護教諭などは危険だということを認識し、私に共感の声を寄せてくださっていました。

 そして前述の通り、2016年1月から4月くらいの間に教育委員会や文部科学省が動きだし、危険な組体操は見直されるようになった。これにより、2016年度の組体操によるケガの件数が減ったんですね。しかも、単に組体操そのものを禁止にすることで減らしたのではなく、続けている学校が多いのにもかかわらず、減ったわけです。これは各学校が安全対策を取るようになり、リスクの高い巨大な組体操をやめたことを示しているでしょう。

 リスクがあったらすべてやめるのではなく、リスクを低減する方向に転換していく。これこそ私たちが目指すべき教育リスクの減らし方だと思うのです。

 教育の現場で行われることについては、意義がないことなど一つもないでしょう。ただそれに対してのリスクはどの場面でも考えていかなければなりません。

 子どもが重大事故に遭ったり、死亡事故に至ったりという事例が起きないと、リスクを考えられないというあり方を根本から見直すべき時期がきたと思います。

(取材・構成/山田真弓、撮影/磯修)