続いて発言するのは天野 妙さんです。羽生編集長は「天野さんはとてもパワフルで、皆の期待を一身に背負い、国会で熱弁を振るってきた方です。ご自分の保活を通してどんな気づきがありましたか?」と問いかけます。

天野 妙さん「自分も『喉もと過ぎれば熱さを忘れる』だった」

 「気づきは3点あります」と話す天野さん。「1番目は『喉もと過ぎれば熱さを忘れる』ということ。私は、これが待機児童問題が解決しない一番の原因ではないかと思います。私も8年前、4年前に保活しました。8年前には希望した6園すべてに入れませんでした。そのときは、これが当たり前の社会なんだなと、自分を納得させていました。怒ってはいけないような気がしたんですね。私たち世代は与えられた環境で頑張りなさい、自助努力でどうにかするのだ、というふうに育てられてきています。そのせいかもしれません。自分で何とか頑張らなきゃという苦々しい気持ちでした

 「ところが、人間ってその苦々しさを忘れてしまうんですね。4年経って、第2子のときに『あ、まただ』と味わいましたが、また忘れてしまっていました。3回目の保活のときは、妊娠中に『保育園落ちた。日本死ね』が話題になっていたので、『今回はあの苦々しさを忘れないようにしよう』と思っていました。『保育園落ちた。日本死ね』のおかげで、問題は顕在化したけれど、解決には至っていません。そこで、後世に遺恨を残したくないという気持ちから、次のプロセスにつなげるために『希望するみんなが保育園に入れる社会をめざす会』の活動を始めました

待機児童問題は期間限定。だから解消しない

 「2番目の気づきは待機児童問題は期間限定の話題だということです。毎年1月~4月まで。ゴールデンウィークを過ぎるとこの話題はパタッと消えてしまうんです。流氷のようでしょう。やはり声を上げ続けないと問題解決には至りません

当事者が『苦しい』と言うとたたかれる不寛容な社会

 「3番目の気づきは、保活当事者が『苦しい』と言えないことです。実はこの活動を始めてから、フローレンス代表の駒崎さんに言われたんです。『天野さん、顔を出して、実名で話してくれてありがとう』って。多くの問題がそうですが、当事者本人が発言しないと問題は変わりません。しかし、今の不寛容な社会では『保育園に入れない、ツラい』と言うと権利主義に見られてしまうのではないかという懸念があり、言い出せない状況があります。SNSで『保育園に入れなかった』と書くだけでワッとたたかれたり、母親が育てるべきだと言われたり。ママたちは、この苦しさをどこへ持っていったらいいのか分からず、苦しみが継続してしまうのです」

写真提供天野さん
写真提供天野さん