20分大ハシャギした後の集中力に驚愕
「わあー」「キャー」「アハハハ」――。
子どもたちの黄色い声が、大ボリュームで鳴り響く。ドタバタ走り回る子ども、マットに飛び込む子ども、大人が手を持って振り回したり、布につかまって引きずられたりしている子どももいる。広さは100㎡ほどのホールで、幼稚園の先生と保護者、子どもたち合わせて30人くらいがすさまじい勢いで遊んでいるのだが、みんな笑顔で、楽しそうだ。
これは、栃木県宇都宮市にあるさつき幼稚園の朝の光景だ。子どもたちが登園してすぐ始まるこの遊びは「じゃれつき遊び」と呼ばれ、もう38年間も毎日行われている。これが、子どもの大脳にある前頭葉を刺激し、活性化させることが科学的に立証されているという。
じゃれつき遊びは想像以上に激しい運動で、ところどころで子ども同士がぶつかりそうになっていて、見ていてヒヤヒヤする。というより、実際にぶつかっているのだが、子どもたちは平気な顔で笑っている。あとから登園してきた子どもも加わって、人数はどんどん増えていく。
そんな状態が20分ほど続いた後、リンリンとベルが鳴り、「おしまいでーす」という先生の声を聞くと、子どもたちの興奮は潮が引くようにすっと鎮まり、マットや布を自主的に片づけ始めた。
その後、全園児が教室に集まって朝の礼拝が始まる。このときも、園長先生の話を静かにじっと聞いている。おとなしいというわけではなく、先生の問いかけにはすぐ反応するなど、話に集中できているという印象だ。話は12、3分ほどに及び、短い話ではなかったのだが、子どもたちの集中力は最後まで切れることはなかった。
これは、一体どういうメカニズムで、子どもたちの脳内で何が起こっているのだろうか。