栃木県宇都宮市のさつき幼稚園で38年も続けられている運動「じゃれつき遊び」。朝に20分ほど行われるこの遊びが、子どもたちの心と体に大きな影響を与えていることが日本体育大学の研究で明らかになりました。脳と心の最新研究結果と共にお届けします。

【年齢別特集 保育園のママ・パパ向け】
(1) 歩き始めの子どもとの「お手軽お出かけ術」
(2) 脳が劇的に成長!? 「じゃれつき遊び」驚きの効能 ←今回はココ
(3) 為末大のかけっこスクールに聞く「速く走る練習法」
(4) 逆上がり「なんでできないの?」は禁句

 子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

20分大ハシャギした後の集中力に驚愕

 「わあー」「キャー」「アハハハ」――。
 子どもたちの黄色い声が、大ボリュームで鳴り響く。ドタバタ走り回る子ども、マットに飛び込む子ども、大人が手を持って振り回したり、布につかまって引きずられたりしている子どももいる。広さは100㎡ほどのホールで、幼稚園の先生と保護者、子どもたち合わせて30人くらいがすさまじい勢いで遊んでいるのだが、みんな笑顔で、楽しそうだ。

 これは、栃木県宇都宮市にあるさつき幼稚園の朝の光景だ。子どもたちが登園してすぐ始まるこの遊びは「じゃれつき遊び」と呼ばれ、もう38年間も毎日行われている。これが、子どもの大脳にある前頭葉を刺激し、活性化させることが科学的に立証されているという。

 じゃれつき遊びは想像以上に激しい運動で、ところどころで子ども同士がぶつかりそうになっていて、見ていてヒヤヒヤする。というより、実際にぶつかっているのだが、子どもたちは平気な顔で笑っている。あとから登園してきた子どもも加わって、人数はどんどん増えていく。

 そんな状態が20分ほど続いた後、リンリンとベルが鳴り、「おしまいでーす」という先生の声を聞くと、子どもたちの興奮は潮が引くようにすっと鎮まり、マットや布を自主的に片づけ始めた。

 その後、全園児が教室に集まって朝の礼拝が始まる。このときも、園長先生の話を静かにじっと聞いている。おとなしいというわけではなく、先生の問いかけにはすぐ反応するなど、話に集中できているという印象だ。話は12、3分ほどに及び、短い話ではなかったのだが、子どもたちの集中力は最後まで切れることはなかった。

 これは、一体どういうメカニズムで、子どもたちの脳内で何が起こっているのだろうか。

子どもも保護者も一緒になって夢中で遊ぶ
子どもも保護者も一緒になって夢中で遊ぶ

元気に走り回る子ども、転がって笑っている子ども
元気に走り回る子ども、転がって笑っている子ども

<次ページからの内容>
・ 前頭葉は人間らしい心をつかさどる部位
・ さつき幼稚園の年長には他園と大きな違いが
・ 運動と学習のセットこそが最高の組み合わせ
・ ワクワクドキドキすることが何より大事