ファイナンシャルプランナーの中嶋よしふみさんが、住宅購入などお金に関するDUAL読者の疑問やお悩みに答える本連載、前々回・前回に引き続き、「資産運用」を始める前に知っておきたいことを中嶋さんが解説します。今回は債券投資と不動産への投資について、基本的な仕組みを教えてもらいました。

■「上」編
「資産運用の『入り口』って?10種の資産を覚えよう」
■「中」編
「株式投資の「キホンのキ」を知っておこう」

 前までの記事では、資産運用を始める際にはもうけるためのテクニック以前の知識として、まずは自分自身が何に投資しているのか把握する必要があると説明しました。そのための知識として「資産にはどんな種類があるのか?」という分類について解説し、株、不動産、債券の3つの中から、株式投資の説明をしました。

株・不動産と比較してリスクが低い「債券投資」

 今回は債券と不動産について説明します。

 株・債券・不動産と資産運用では主に3つの投資先があります。この中でも最も低リスクな運用が債券です。株や不動産と比べて一般的ではないかもしれませんが、手短に説明すると「利息付きで借金を返してもらえる権利」となります(※「ゼロクーポン債」のように、利息が付かない債券もあります)。

 例えば、100万円を投じると「毎年1%の利息を受け取ることができ、10年後には元本もそのまま戻ってくる」といった条件で売られています。利回りと満期までの期間は債券によって異なります。

 債券は発行母体によって名前も変わります。国が売っているものは国債、企業が売っているものは社債です。都や県が売っている債券もあります。発行母体が破綻しない限り、通常は元本が保証されますので、目減りさせたくない資金を安定運用する際に用いられます。

 「発行母体が破綻しない限り」と書いた通り、債券のリスクは国や企業の財政状況、つまり利息を払えるかどうか、元本を返済(償還)できるかどうかで決まります。一言で言えば「潰れないかどうか」です。

外国債券は先進国と新興国でリスクが大きく異なる

 銀行や保険会社は、預金者や契約者から預かったお金の多くを国債で運用しています。なぜなら預貯金や終身保険、学資保険などの形で受け取った資金は利息を付けていつかは返さないといけないからです。国債は国内での運用手段として、最も低リスクの運用になります。なぜなら国より潰れにくい発行母体はないから、ということになります。

 銀行と保険会社の話をしましたが、個人が債券を直接保有する機会は株と比べて少ないと思われます。債券の中で一番身近なものとしては、個人しか保有できない「個人向け国債」でしょうか。アセットクラスは、日本の国債なので国内債券に分類されます。銀行にお金を預けても結局は国債にお金が流れますので、やっていることは銀行預金とほぼ同じです。

 外国の国債を直接保有することも不可能ではありませんが、投資信託を通じて保有するほうが一般的です。株と同じく海外の債券も先進国と新興国、両方があります。性質が異なるためどちらが良いと一概にいえませんが、先進国の債券のほうが一般的にローリスクです。特に、ドル・ユーロ・ポンドといった基軸通貨建てで発行された債券はよりリスクが低くなります。一方で新興国債券は利回りが高い反面、為替が大きく上下します。発行母体である国もデフォルト(債務不履行・借金を返済できないこと)の確率が高いので、債券の中ではハイリスクな投資になります。

 どの国の債券を買えばいいの?と迷われると思いますが、株と同じく個別の債券を買わなくても、先進国全般の国債、あるいは新興国全般の国債に資金を投じる投資信託があります。特定の国に資金を投じたいという意向がないようでしたら、そういった投資信託を選択したほうが無難です。