国内、先進国、新興国……リスクとリターンの違い

 株は「国内、先進国、新興国」の3つに分類しましたが、それぞれ性質も異なります。

 日本と先進国(通常、日本を除く先進23カ国を指す)はいずれもある程度経済が成熟していることから、株価の変動は比較的穏やかな傾向にあります。一方で新興国は名前の通り、経済成長の真っただ中にあります。株価はその時々で大きく上下しますので、株の中でもさらにハイリスク・ハイリターンです。

 何十年か前、日本も高度経済成長期で東京オリンピック開催前には10年もかからずに所得が倍増したような時期がありました。新興国はそんな状況にあるといえば分かりやすいかもしれません。

 そして中国の大気汚染などを見ても分かるように、経済成長には負の側面もあります。これも日本が過去に公害で悩まされた状況と同じです。日本とは比べ物にならないほどの経済格差の拡大や成長に伴うひずみなど、新興国への投資は決してプラスの側面ばかりではありません。

 「予想と実態のズレによって株価は動く」という原則は、新興国の株にも適用されます。新興国が急激に成長していることは誰でも知っています。加えて上記の通り高成長には歪みが伴います。そんな状況で高い期待に応えなければいけないわけですから、新興国=急成長=必ずもうかる、という図式は当てはまりません。

日本の株価が急激に上昇したのはなぜ?

 不良債権処理をしていた2003年ごろやリーマンショック後は「日本経済は終わった」といわれていました。誰も日本の株価が上がるとは思っていなかったわけです。実際、株価は長期にわたって低迷していました。しかし2012年末に政権交代が起きると急激に株価が上昇し、2013年は1年で日経平均が50%以上も上昇しました。

 これは期待の逆、つまり失望のどん底にあった日本株に対する評価が見直されたことが極めて強く影響しています。日本経済が50%成長したわけではないのに株価は50%も上昇する、という数字を見れば、予想(期待)と実態のズレによって株価が動く、という説明にも納得してもらえるのではないでしょうか。

 アベノミクスによる大胆な金融緩和などももちろん影響はしていますが、それ以上に「日本経済は完全に終わったと思っていたら、案外終わっていなかった」という極めて大きな期待と実態のズレが株価上昇のきっかけになったわけです。

 株の分類は、国別以外にも、時価総額で分類する方法(大型・中型・小型)、そして業種別の分類(セクター)、輸入型・輸出型などがあります。

 例えば、トヨタ自動車は「日本株」であり、時価総額が大きい「大型株」であり、「自動車」のセクターであり、「輸出型」で円安になると業績がアップしやすい企業である……と様々な要素が組み合わさっていることが分かります。

 トヨタ自動車に投資をするかどうか検討するのであれば、どんな車を売っているのか、日産や三菱よりも良い車なのか、といったことはもちろん重要な要素ですが、買うものは車ではなく株です。上で書いたようにどのカテゴリに属する株なのかを理解したうえで投資をすることは、「自身が何をやっているのか把握する」という意味で極めて重要であるといえます。