適度な距離感を保ちながらも、親の深い愛を分かりやすくアピールすることと、子どもの愛を照れずに受け止めること。この2つが、思春期に差し掛かった子どもたちと上手にコミュニケーションを取る秘訣だと、クッキングプロデューサーの葛恵子さんは言います。娘の友達のお母さんから頼まれて、基本的な料理とマナーを教えようと子ども向け料理教室「リトルレディーズ」を始めて早17年。多くの子どもたちの成長を近くで見守ってきた葛さんに、今回は失敗の大切さについて伺いました。

なるべく口出しせず、子どもたちが自分でリカバーする様子を見守る

クッキングプロデューサーの葛恵子さん
クッキングプロデューサーの葛恵子さん

 「リトルレディーズ」で子どもたちがどんなふうに自信をつけていくかというと、もちろんスルスルっと上手にできたら必ず褒めてあげます、それは本当にすごいことだから。でも、そういう成功体験よりも、むしろ失敗が大事なんです。料理をしていると、必ず何かしら失敗はあるんです。順番を間違えたり、何かを入れ過ぎたり、形がうまく整えられなかったり、色々なことが起こるわけです。それを自分で工夫してリカバーする。もう一度作り直してみたり、全体的に量を増やそうと考えてみたり。そのときに「よく気がついたね」「そこが大事!」としっかり褒めるようにしています

 そうすると、「失敗をしたけれど、僕/私はその後、自分で考えて対処して、ちゃんとできたんだ」っていう自信につながります。そこの部分を育てるのがすごく大事かなと思います。そういう経験を、子どもたちはずっと覚えているので、将来、何か困ったことが起きても、「大丈夫、自分は乗り越えられる」と落ち着いて解決策を考えられるようになります。だから私は、失敗して、それを自分でなんとかしようとしている姿を一生懸命見て見つけて、「そうそう、今のそれがいいわね、すごくいい」って言うようにしています。

 なので、私のほうから、解決策を提示することはあまりありません。なるべくじーっと見ている。というよりも、もともと私は遅いのね、口に出すのが。頭では考えていてもそれを言葉にして相手に伝えるタイミングが遅いの。いいことばかりじゃ決してないんだけれど(笑)、料理教室の子どもたちにとっては、ちょうどいいタイミングのようです。