皆さん、こんにちは。治部れんげです。今日は働く母にとって大きな課題の「ワンオペ育児」を取り上げます。

仕事と育児の両立を困難にする要因は色々あります。その解決を会社や政府に求めるほうが、配偶者に求めるより希望が持てるのではないか、と思うことがたまにあります。というのも、学歴も専門性も高いワーキングマザーの中に、自らのワンオペを「仕方ない」と諦めている人が少なくないからです。

女性ばかりに家事育児負担がのしかかる状況をおかしいと思い、私は10年前、アメリカで、共働き夫婦に関する調査をしました。印象的な出会いの一つに、ある専業パパがいます。このパパは名刺に“A man who changes diapers changes the world(オムツを替える男が世界を変える).”と書いていました。理由を聞くと、かつてフェミニストが使っていたフレーズをまねしたのだ、と言います。

社会問題にも関心が高い、DUAL読者のワーキングマザーにお伝えしたいのは、「あなたが夫を変えることが、社会を変える一番の近道である」ということです。そういうわけで、今回は、あまり心地良い話ではないかもしれませんが、お付き合いいただけると嬉しいです。

 最初に、「ワンオペ育児」の現状を把握しましょう。次の図を見てください。

 共働き子育て中で、妻が恒常的にワンオペ育児をしている場合でも、内情は様々です。それぞれのタイプに応じて分類するため、「夫と妻それぞれにワンオペの自覚があるかどうか」を軸に取ってみました。

ワンオペ育児の自覚が夫婦ともにある場合、話し合いは始めやすいが……

 エリアAは夫婦ともに「妻がワンオペ育児をしている」という自覚があるケースです。この場合、夫に現状を変える意思があり、働き方を変える余地がある場合は長期的には改善に向かうでしょう。私が聞いた例では、夫婦ともに働き方の問題を話し合った結果、夫が上司と相談して異動希望を出したり、転職したりしたという話もあります。夫婦ともに、ありたい生活のイメージが一致しており、妻がはっきり意見を言う性格で、夫も家族を優先したい、と考えている場合は改善に向かいやすいです。

 同じエリアAでも、妻の問題提起に対して夫が開き直ったり、逃げたりすると、膠着状態に陥ってしまいます。こうした例も複数聞きますが、妻が諦めたケースでは、夫が単身赴任しているほうが夫婦関係は良い、といった声も聞きます。残念ながら、同居しないほうがうまくいくと言えるでしょう。責任は夫にありますが、夫はそれに気づいていません。

妻にだけ自覚があり、夫は「どこ吹く風」のパターン

 エリアBは、妻にはワンオペの自覚があるにもかかわらず、夫にはその自覚がないという場合です。育休中に妻がすべて家事育児をやっていると、この状況に陥りやすいです。

 この場合、問われるのは妻側のコミュニケーションへの意思と夫側の気づきでしょう。諦めずに話し合いを続けた結果、エリアAに移行し、解決に至った家庭も実際にあります。その夫は今では基本的に残業せず、子どものお迎えや夕食などを自分の責任として手掛けるようになっています。

 エリアBからAに移行した夫に話を聞いたところ、「ワンオペに関する話を聞くと、自分が責められているようで申し訳なくなる。ワーキングマザーには『夫を諦めないでほしい』と伝えたい」と言っていました。改善に向かう事例もあると知ると、少し励みになるのではないでしょうか。

 これまでの取材では、エリアBにとどまるケースも多いと私は見ています。その背景には「かわいい妻でいたい」という女性側の無意識の希望もあるようです。つまり、夫に仕事を調整してもらってまで、家事育児をやってほしくない。夫には出世街道を歩いてほしい、といった願望が妻にあることが少なくありません。たとえ大変でも、文句を言わずに家事育児を自分がやり続けるべき、と女性側が思うことも少なくありません。この問題については、後半で詳しく取り上げます。