次に、解決に向けた展望を、次の図を見ながら考えていきます。

 ここでは、縦軸に「夫の時間資源の有無」、横軸に「妻のジェンダー規範の強弱」を取っています。時間資源の有無は、残業を減らしたり、柔軟な働き方をしたり、異動や転職といった形で家庭に向ける時間を捻出できる可能性を示します。ジェンダー規範とは「男だから/女だから、これをしなくてはいけない、すべき」といった考えを指します。

夫に時間資源があり、妻のジェンダー規範が強い場合は、変化のチャンスを狙う

 上図のエリアAは、「夫に時間資源があり、妻のジェンダー規範が強い」という場合です。日常生活に照らすと、夫は仕事のやり方を工夫して家事育児の時間をつくることもできるけれど、妻に「自分がやるべき」という気持ちが強くて夫にやらせない、という状況です。これは、1つ目の図のエリアCで示した「本当はもっと家庭参加したい夫、任せられない妻」に該当します。

 これは高学歴の女性に多い傾向です。特に自分の母親が専業主婦だった場合、「フルタイムで働きながら、お母さんと同じように家事育児をきちんと一人でやらなくては」と思い込む人が少なくありません。

 自分でこうした思い込みに気づくのは難しいのですが、仕事の内容が変わったり、ちょっと忙しくなったりしたときは変化のチャンスです。「夫に頼んだら、意外と嫌がらず引き受けてくれた。そして任せてみたら予想以上に楽しそうにやってくれた」という話も聞きます。仕事の場では賢くて論理的な女性も、自分自身に関する思い込みに気づくのは容易ではありません。「もしかしたら、自分もこれかも」と思ったら、何かきっかけをつかまえて夫に任せることから始めてみてください。

夫は長時間労働、妻が「家のことを自分でやりたい」なら問題なし?

 エリアBは夫が長時間労働で家庭に使う時間を取れず、妻のジェンダー規範が強く「家のことを自分で全部やりたい」と思っている場合です。これは、1枚目の図のエリアBで指摘した問題と重なります。夫婦ともに「現状のままでいい」と思えるのであれば、それも一つの選択と考えても良いかもしれません。「ワンオペ」ではあっても夫婦双方が納得していれば「問題ではない」ケースと言えるからです。