雇用保険法の改正で「育児休業の努力義務」を明記

塩崎 実はそれは「介護」にも通じる話で、介護も保育も、施設の整備や人材の確保というのも大事なんですが、駒崎さんがご指摘のように働き方という問題のほうが、保育士さんらの離職の理由の大きなウエートを占めているんです。アンケート調査などをやってみると、圧倒的にそちらのほうが大きいんですね。従って3月に、働き方改革の実行計画をまとめました。

 保育や子育てに関しては、育児休業を取る男性が日本は圧倒的に少ない。スウェーデンなどは9割近くが取得しているのに比べ、日本は2.65%しか取得していません。そこをどう変えたらいいのかということに関しては、よほどのことをやらないと企業の文化は変わらないのではないかと思っています。

 本当は3月末までに通す法案の1つとして、「雇用保険法の改正」がありました。そこに育休取得の仕方について言及している部分があるのですが、なかなか答えが出なくて、ひとまず「子どもが生まれるということが分かったら、育児休業について考えなさいよ」という“努力義務”を課しました。

 本来であれば義務化をして、「あなたは育児休業を取ったほうがいいんじゃないか?」ということを企業から持ち出すくらいにしなくてはならないと、個人的には思っています。しかし、現状では努力義務になっています。

 私は事務方に「狂ったような案をいっぱい作っていくぞ」と伝えました(笑)。今までの延長線上にあるようなやり方では、企業が変わらないし、男性が育児休業を取れるようにはならないだろうと思うからです。

駒崎 塩崎大臣は、先日「イクボス宣言」されたじゃないですか。「大臣で初なんて、すごいな」と思って見ていました。

塩崎 これは厚労省の若手がアイデアを作ってやってくれているんですが、彼らが今、各省庁と各企業へ「みんなもイクボス宣言してください」とお願いに回ってくれています。

 やはりこれは政治が率先してやらないといけない。厚労省では、前月に子どもが生まれた職員に、大臣か副大臣か政務官の部屋に来てもらって、そこに上司である課長も呼んで、「おめでとうございました。ぜひ育休を取ってください」と伝えています。どういう時期に育児休暇を取るかは、それぞれのご家庭の事情に合わせていただくとして、まずは「育休取ります」と言い出しやすくなるようにしています。

駒崎 いろんな手を使って働き方を変えて、親御さんたちがちゃんと子どものお迎えに行けて家に帰り、食卓を囲めるようにしていかないと、今の働き方のままでは「子育て=つらい」となってしまうと思うんです。

塩崎 「テレワーク」なんかは、子育て中のお母さん方がフル活用しないといけないものの1つですが、まだまだ使い勝手が良くない。そこを直していかないと、長時間労働になるのではないかという説もありますが、一方で、家に帰ってお子さんにごはんを作って寝かしつけてから仕事をさあやろうとなると、22時からは深夜の割増賃金を払わなくてはならない。そうなると、深夜労働をさせているとか、割増賃金がかかって予算がないぞと上司に言われ、非常にやりにくくなっているんですね。

 「健康を保ちながら仕事をしても、子育てをしても不利にならない」「頑張れば、やれるんだ」ということを、どう制度として担保していくか。考えていかなければいけないですね。