中学時代から「大人は助けてくれない」と感じていた

島田 僕の場合は親というより社会全体の教育方針に対してひねくれた考えを持っていて、それが勉強への意欲に結びついていたような気がします。小学校からずっと「君たちは自由だし、夢を追う権利がある」と教わってきているはずなのに、中学くらいからだんだんと「それってウソじゃねーかよ」と気付き始めるんですよね。でもだからこそ、「おまえたち大人が『夢を追っていい』と言ったんだから、俺は追うぞ。やってやる」という気持ちが増しました。

駒崎 反骨心だね。お母さんは基本的に応援する姿勢でしたか?

島田 東大に行くと初めて伝えたときは、「おまえは気をたがえたのか」という反応でした。人類が初めて月を目指すくらいのことだと。でもだんだんと僕の成績が伸びて現実路線になってくると、少なくとも邪魔はせずに応援してくれようとしていたと思います。実際には僕の数カ月後の受験よりもその日の食事をどうするかに必死で、僕が受験費用としてためるようにお願いしておいたお金もパーになったこともありました。

駒崎 なるほど。かなり過酷な状況だったんですね。島田君は今、低所得世帯の子どもを支援するNPO法人キッズドアで学習支援のボランティアもやっていますよね。勉強やバイトで忙しいのに、その活動をしようと思ったのはなぜですか?

島田 僕自身、中高生時代に、周りの大人から十分に助けてもらえなかったという思いがすごくあるんです。

駒崎 助けてもらえなかった。

島田 はい。もちろん、塾長など環境を整えてくださった方々には感謝していますが、本当に困ったときにSOSを訴えた相手からは全然何もしてもらえませんでした。例えば高校時代、ある出来事から身に覚えのない数十万円の負債が発覚したことがあったんです。未納代金の請求に困って、学校の教師に相談しましたが「どうしようもない」とだけ。

 中学時代から「大人は助けてくれない」とうすうす感じてはいましたが、やっぱり無理なんだなと。助けてくれないだろうとは思っていたけれど、僕は本当に死んでしまったときに「あいつは大人に助けを求めるべきだった」と言われるのが嫌なので一応頼ってはみたのですが、やっぱりダメでした。地元の法律事務所を訪ねても、「あなたの名義だから法律上はどうしようもない」という反応でした。