少子高齢化、人権、子育て支援など、今日本の社会が直面している諸問題について、NPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹さんが各界の専門家や政治家に切り込む本連載。生活保護家庭から東京大学に進学した現役大学生の島田さんに、“世帯分離”をして進学した経緯やこれからのことを伺います。今回は「下」編です。

※インタビューは2017年3月に実施。この記事の内容は当時の状況や情報に基づいています。

■「上」編
駒崎弘樹 生活保護家庭から東大に行った学生に聞く
■「中」編
生活保護と東大進学 発表まで生きた心地しなかった

僕は引くわけにはいかず、まい進するしかない

駒崎 島田君がピンチに遭遇するたびに、ある種の社会のセーフティーネットがあったことは示唆的だと思います。恐らく、この日本には何千人もの「島田君になれたかもしれない人たち」がいて、でも島田君ほどの幸運に恵まれずに離脱していったのだろうなぁ……。

島田 まさにそういった意識が僕の中にも強くありまして、こう言ったら少し偉そうかもしれませんが、僕の後ろには何千人もの屍があって、その屍の上に自分は立っているのだと。だから僕は引くわけにはいかず、まい進するしかないんです

駒崎 「生活保護家庭の子どもは大学に行っちゃいけない」という制度は「そもそも生活保護家庭で大学に行きたい子どもなんて少数でしょ」という前提に立っているけれども、いやいや、ここに島田君のような人がいるわけだし、チャンスさえあれば日本の未来を変えるような人材はいくらでも現れる。チャンスは平等でないといけない

 僕はこれまで公的給付型奨学金の必要性を訴えてきて署名運動もして、なんとか150億円規模の実現には至ったけれども、もっと充実させていかなければいけないなと改めて思いを強くしました。島田君は大学進学を目指して勉強しているときに、「親がお金で困っているから勉強している場合ではない」と感じたことはありましたか?