自習専門の塾で夜まで受験勉強

島田 はい、ある大手企業の給付している奨学金が条件が良く、これを受けなければ大学生活を送ることはできないと考えました。

駒崎 ちなみに、貸与型の奨学金を受ける選択肢には消極的だったんですか?

島田 「貸与型」というのはつまり「借金」というイメージが強く、借金で人生がどう狂わされていくかは親の姿を見て嫌というほど知っていました。だから、借金を背負うことだけはしたくなかったんです。

駒崎 なるほど。それで給付型奨学金を探してみたが公的制度は見当たらず、民間でいくつか見つけたと。その中で島田君の生活をサポートするのに十分だったその奨学金の当時の条件が「文系入学」だった。だから、本当は理系なのに、無理やり文系で受験したと。

島田 はい。

駒崎 なかなかできないことですよ。すごいハンデじゃないですか。利き手じゃないほうで試合して優勝するようなもので。

島田 やってみると結構大変でしたね。社会とかすごく勉強する範囲が広いので。

駒崎 受験勉強はどうしたんですか? 予備校だと費用がばかにならないですよね。

島田 はい。人気講師の衛星授業を受けられる大手予備校に通うことは、経済的に無理でした。模試の成績次第では無料になるところもあるらしいのですが、たまたま僕が相談に行った予備校の担当者が受け付けてくれなくて。学校では教師との折り合いが悪く、勉強する環境に悩んでいたときに、たまたま高3の夏、自習専門の塾を見つけて。模試の東大A判定があれば全部タダになるというので、「絶対受かるので入れてください」と塾長に直接頼み込んで入れてもらいました。夜まで使える机と椅子があって、パソコンもコピー機も使い放題。これはありがたかったですね。家で勉強していても時々電気が止まって、夜に勉強できなくなることもあったので……。

駒崎 そうか。確かに電気が夜までつくことは勉強するうえで大事ですね。それから文系の科目も猛勉強して、合格する自信を持てるようになったんですか?

島田 東大模試で全国十数位というくらいまでになったので、順調にいけば受かるだろうという感覚はありました。むしろ首席を狙ってやろうという気持ちでした。それが、受験当日に大失敗をやらかして、首席どころではなかったのですが。

駒崎 大失敗とは?

島田 まさかの数学で満点を取れないという…。

駒崎 それ、失敗!?(笑)

島田 あと英語で問題の解き忘れもやらかしましたし、合格発表までの2週間は生きた心地がしませんでした。

駒崎 もしも受からなかったら…。

島田 浪人という選択肢はあり得ず、不合格なら進学を諦めて働くしかありませんでした。発表直前は非常にナーバスになって、死ぬことばかりを考えていました。