少子高齢化、人権、子育て支援など、今日本の社会が直面している諸問題について、NPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹さんが各界の専門家や政治家に切り込む本連載。生活保護家庭から東京大学に進学した大学3年生の島田さんに、“世帯分離”をして進学した経緯やこれからのことを伺います。今回は「中」編です。

■「上」編
駒崎弘樹 生活保護家庭から東大に行った学生に聞く
■「下」編
現役東大生 僕を見捨てた大人と同じになりたくない

※インタビューは2017年3月に実施。この記事の内容は当時の状況や情報に基づいています。

見つけた奨学金の条件が「文系入学」だった

駒崎 前回の記事では親が生活保護を受給し始めた中学1年生のときからのことをお話しいただきました。東大は、いつごろから目標に据えるようになったんですか?

島田 勉強が面白くなってから数学のとりこになり、高1くらいから「数学者になりたい」という目標を持つようになりました。この世の中の真理に一番近いのは数学ではないかという考えに至って、突き詰めてみたいという思いがどんどん膨らんできたんです。

 数学者になるためには大学に進学せねばならず、目指すなら一番を狙っていこうという気持ちがありました。まずお金のことが気になったので、高校のオリエンテーションでもらう資料などで調べると、受験費用だけでもばかにならないと知りましたし、進学するなら国公立で授業料免除や奨学金が適用される大学や、バイトの時給が高い都市圏を選ぶ必要があると考え、選択肢を絞っていきました。その結果、すべての条件を満たすのは東大しかなかったということです。高知からより近い京都大学も候補に挙がったのですが、「文系で入学してから理系に転向する」ことが京大ではできなかったのです。

駒崎 出ました、「文系で入学して理転する」という決断。これ、かなりイレギュラーなことですが、なぜそれをしなければいけなかったのか教えてもらえますか? 

島田 僕は数学者になりたいので理系の学部に進学したかったのですが、当時調べ尽くして、僕が大学生活を送るために必要になる給付型奨学金を獲得するための条件が「文系での入学」だったんです。

駒崎 給付型奨学金というのは、返す必要のない奨学金のことですね。