皆さん、こんにちは。株式会社子育て支援の代表取締役、熊野英一です。

 一般的に人格とか性格などを指すアドラー心理学の「ライフスタイル」、代表的な6類型のうち、前回は3類型を紹介しました。この記事では残りの3類型について詳しく見ていきましょう。自分自身や家族のライフスタイルを知れば、もっと人間関係が円満になるかもしれません。

<上編記事> アドラー流 人の「思考・行動パターン」6類型

 アドラー心理学では、一般的に人格とか性格と呼ぶものを「ライフスタイル」と言います。「親の価値観や家族の雰囲気」および「きょうだい関係・誕生順位」が個人のライフスタイル形成に大きな影響を及ぼす一方で、最後の最後は「自分で自分のライフスタイルを主観的に決めている」ということを、これまでご説明してきました。

 代表的なライフスタイルの6類型のうち、前回は「ゲッター(欲張りタイプ)」「ベイビー(赤ん坊タイプ)」「ドライバー(人間機関車タイプ)」の3つをご紹介しました。この記事では残りの3つ、「コントローラー(自己抑制タイプ)」「エキサイトメント・シーカー(興奮探しタイプ)」「アームチェア(安楽タイプ)」について詳しく見ていきます。

 ゲッター(欲張りタイプ)・・・「他人のものは自分のもの」権利主張型

 ベイビー(赤ん坊タイプ)・・・「他人の顔色をうかがい、好かれようとする」依存型

 ドライバー(人間機関車タイプ)・・・「他人に任せることができない」猪突猛進型

 コントローラー(自己抑制タイプ)・・・「感情をあまり表に出さない」失敗回避型

 エキサイトメント・シーカー(興奮探しタイプ)・・・「好奇心旺盛で飽きっぽい」竜頭蛇尾型

 アームチェア(安楽タイプ)・・・「モットーはマイペース」の安楽椅子型

コントローラー(自己抑制タイプ)・・・「感情をあまり表に出さない」失敗回避型

 「私は失敗してはならない」という自己理想を持っている人です。私は法人向けの研修を実施する際、しばしばライフスタイル診断の時間を設け、受講者のライフスタイルの分布を確認します。毎回3割~4割の方がこのライフスタイル(もしくはその複合型)に合致するようですので、日本人には多いタイプと言えるでしょう。

 さて、コントローラーというライフスタイルを有する人の行動特性の具体例を見てみましょう。完全癖が強く、競合的で、他者に良く見られたがるという点で、実は、前述のドライバーと似ているところもあるコントローラー。両者の違いは、こうした目的を達成するために選択する作戦に表れます。

 ドライバーは「勝たねば」「成功しなければ」「称賛を得たい」という自己理想・価値観に突き動かされ、能動的なアクションを取りがちです。これに対して、コントローラーは「負けないように」「失敗してはならない」「けなされたくない」という自己理想・価値観をベースに、むしろ「行動しない」という非積極的な選択をすることがあるのです。

 日本人に多いと言われるコントローラー。過度に慎重で、引っ込み思案なところが目立ちます。「私などは・・・」と「謙遜の美徳」を盾にして、自らリスクをとって責任を果たすことを上手に避けたりします。他者からの評価をとても気にしますので、過度に良心的な対応を取り過ぎて、必要以上の負担を背負うことが多いかもしれません。約束の時間をしっかり守るべく、いつも5分前・10分前行動は当たり前。清潔さ・身綺麗さ・正しいカチッとした服装を好みますので、好印象を抱かれることが多いですが、一方で、融通が利かない「堅物」という印象を与えていることも多いでしょう。

 臨機応変にとっさの判断をしたり、前例がないことに対処したり、あるいは、独創性を発揮しなければならない役割や仕事は苦手かもしれません。むしろ、やるべきルーティンがしっかりと定まっていて、毎回ミスなくコツコツと処理をすることを求められる仕事では、自分のライフスタイルを有効に活用して活躍するでしょう。

 感情的な自分を見せることを恐れているため、いつも冷静さを装ったり、表情に乏しかったりするかもしれませんが、コントローラーが無感動な人で感情の起伏が少ないというわけではありません。実のところは、心の中で喜怒哀楽を大いに感じているのですが、そうした感情を必死に抑えようと努力しているのです。自分の弱さやダメな部分を見せることを嫌がりますので、本人もくつろいで楽しむことが苦手ですし、親密で水入らずの対人関係を持つことも得意ではありません。

 コントローラーのこうした特性が、非建設的な形で表出すると、自分では行動をしない割に、口先だけで他者をけなして、強がったり偉くなったような気になったりしている人もいるでしょう。

 このような行動特性見せるコントローラーに特徴的な育ち方はあるでしょうか? 恐らく、コントローラーの親の多くは、子どもに対して大きな期待を寄せてきたでしょうし、子どもはその期待に応えなければ、と必死で頑張ってきたでしょう。子どもの成長を期待するがあまり、期待に応えたら褒める、そうでなければ叱る、といった賞罰教育を重視し、競争に勝つことや、失敗しないことが家庭の価値観として共有されていたかもしれません。抑圧的で過干渉な親のもとで育つと、子どもはコントローラー的なライフスタイルを形成する可能性が高まるでしょう。例えば、しつけに厳しく、子どもが何をするか・しないかにつき親が手を出し、口を出すことが多い家庭です。「むちゃをしてはいけない」「慎重にいきなさい」といった、一見子どものためを思ってのアドバイスが、親が思う以上に子どもの人格形成に影響を与えます。むちゃをせず、何事も慎重に成長してみたら、今度は一転して「チャレンジ精神に欠ける」「覇気がない」とダメだしをされたら、子どもは勇気をくじかれてしまうことでしょう。