皆さん、こんにちは。株式会社子育て支援の代表取締役、熊野英一です。

 3月の卒園・卒業から、4月の進級・入学と、バタバタと忙しく時が過ぎ、気づけば5月になっていた!という読者の皆さんも多いのではないでしょうか?

 私も、まもなく発売を予定している書籍『家族の教科書 ~子どもの人格は、家族がつくる~』(アルテ刊)の最終編集作業に追われて、今年の前半は例年よりもさらに忙しく感じています。

 さて、今回のコラムも、この書籍のテーマである「家族の在り方」が子どもの人格形成に与える影響について、前回「きょうだい関係・誕生順位」と子どもの人格形成」前々回「子どもの人格形成を左右する『家族の価値と雰囲気』」に引き続き、アドラー心理学の見地をご紹介していきたいと思います。

私たちは自分で決めたライフスタイルに従って生きている

 これまでのコラムで、「親の価値観や家族の雰囲気」および「きょうだい関係・誕生順位」が、子どもの人格形成に様々な影響を与えることについて、私がアドラー心理学のカウンセリング技法を学んだテキスト(アドラー心理学教科書/ヒューマン・ギルド出版部)をベースに、考察を進めてきました。

 繰り返しになりますが、アドラー心理学では、一般的に人格とか性格と呼ぶものを「ライフスタイル」と言います。このコラムの読者の皆さんは、私たちはおおむね10歳くらいまでに、自分自身の人生の基本設計図、ガイドマップの役割を果たす「ライフスタイル」を確定していくという考え方を既にご理解くださっていると思います。

 その人らしい「思考のクセ」や「行動のパターン」の総称である「ライフスタイル」は、次の3つの要素から構成される「その人の信念の体系」とも言えるでしょう。

<アドラー心理学 ライフスタイルの3要素>

1:自己概念=自分自身の現状をどうみなしているか。
「私は~である」

2:世界像=周囲の人・人生の現状をどう見ているか。
「世界(人生、人々は)~である」

3:自己理想=自分がどうありたいか。周囲の人からどう扱ってほしいか。
「私は~であるべきだ」

 「自己概念」とは、「私は◯◯という人だ」「私は△△ではない」と、自分自身で設定しているセルフ・イメージやアイデンティティーのことです。

 「世界像」とは、「ヒトってさぁ・・・/世間ってさぁ・・・/人生っていうものは・・・/仕事ってね・・・」というような出だしで、友人同士や夫婦で語り合ったり、あるいは自分自身の頭のなかで繰り返し反すうしたりするような、自分なりの世の中に対する信念・ビリーフのことを言います。

 「自己理想」とは、「私は◯◯であるべきだ/△△でなければならない」というもののほか、「私にとって大切なものは・・・だ」とか「××は嫌だ」といった行動を取捨選択する基準となる価値観のことを言います。

 注目していただきたいのは、上記3要素のいずれにおいても、それらは客観的事実に基づくものではなく、あくまでも、その人が主観的に「そのように思っている・意味づけているだけである」という点です。

 「親の価値観や家族の雰囲気」および「きょうだい関係・誕生順位」が個人のライフスタイル形成に大きな影響を及ぼす一方で、最後の最後は「自分で自分のライフスタイルを主観的に決めている」ということは、大きな希望だとは思いませんか? なぜなら、もし自分のライフスタイルが気に入らなければ、再び、自分の意思で「新たな意味づけ」をし直せば良いのですから。

 あなたはご自身のライフスタイルに十分満足していますか? それとも、少しだけ修正したいなぁという点がありますか? あるいは、そもそも自分のライフスタイルをよく理解していないかもしれませんね。いずれにしても、まずは、現時点における自分のライフスタイルをよく理解することが出発点となります。それでは、早速、代表的なライフスタイルの類型をご紹介していきましょう。

代表的なライフスタイル

 ゲッター(欲張りタイプ)・・・「他人のものは自分のもの」権利主張型

 ベイビー(赤ん坊タイプ)・・・「他人の顔色をうかがい、好かれようとする」依存型

 ドライバー(人間機関車タイプ)・・・「他人に任せることができない」猪突猛進型

 コントローラー(自己抑制タイプ)・・・「感情をあまり表に出さない」失敗回避型

 エキサイトメント・シーカー(興奮探しタイプ)・・・「好奇心旺盛で飽きっぽい」竜頭蛇尾型

 アームチェア(安楽タイプ)・・・「モットーはマイペース」の安楽椅子型