『家族最後の日』『かなわない』など、二人の娘さんとラッパーの夫ECDさんとの暮らしを、淡々とした文章で綴ったエッセーが、話題を呼んでいる写真家の植本一子さん。1歳半違いの子どもたちを抱えたワンオペ育児に限界を感じたり、夫へのいら立ちが爆発したり、仕事と育児の両立に悩みながらも、慌ただしく過ぎゆく分刻みの毎日―――。多くの働くママに思い当たる経験が少なからずあることでしょう。

 幸せなはずなのに、孤独で苦しい。思うとおりに行かない子育ての大変な時期を乗り越えるため気持ちに蓋をし、つい流していきそうになる日常を、植本さんは目をそらさず丁寧に心の奥を見つめながら記録し続けています。最新刊『家族最後の日』では、「義理の弟の自死」「実母との絶縁」そして「夫のがん発覚」と、家族を取り巻く3つの重いテーマと向かいつつも、自分の正直な気持ちを隠さず、もがき、真っ向から向き合っていく言葉が印象的です。そんな植本さんに、「家族」、そして「母であること」について聞きました。2回に分けてインタビューをお届けします。

(上)母との絶縁 されて嫌だった子育ては絶対したくない←今回はココ
(下)「自分がしたいこと」が分からないと子離れできない

写真家
植本一子さん

1984年広島県生まれ。2003年にキヤノン写真新世紀で荒木経惟氏より優秀賞を受賞、写真家としてのキャリアをスタートさせる。広告、雑誌、CDジャケット、PV等幅広く活躍中。2013年より下北沢に自然光を使った写真館「天然スタジオ」を立ち上げ、一般家庭の記念撮影をライフワークとしている。著書に『働けECD わたしの育児混沌記』(ミュージック・マガジン)『かなわない』(タバブックス)『家族最後の日』(太田出版)がある。

第二子出産 家にこもって誰とも話せない日々

DUAL編集部(以下————) 過去の著書の中では、(現在は小1となった)次女が生まれた直後からの2、3年はすごく忙しく、「孤独な育児で日々がつらい」ということを書かれていましたね。喜びの瞬間もたくさんあるけれど、逃げ出したくなるような大変でつらいことにも直面する子育ての現実。両方入り混じるその感情にとても共感しました。植本さんが、これまでで一番育児が大変だと感じた時期はやはりそのころだったのでしょうか?

植本一子さん(以降、植本) えーっ、一番?! いつだろう? 子育ての大変な時期で鮮明だった記憶も、時間とともに不思議と薄れていくものなんですよね(笑)。……でも下の娘が年子で生まれた新生児のときが、やっぱり一番きつかったですかね。上の娘もまだ1歳半、新生児と私と3人でずっと家にいて。そのときはものすごく大変で、今となってはあんまり記憶が残っていないくらいなんです。当時は旦那さんも普通に働いていたし(*ミュージシャンである夫・ECDさんは現在病気療養中)、家にこもって、誰ともしゃべることができない日も珍しくなかった。ほんとに、地獄でした……思い出すと怖い~!

―― 年子での出産は、新生児期は特に大変ですよね。産後、里帰りなどはしなかったのでしょうか?

植本 実母に手伝いに来てもらっていたんですけど、結局、一週間もたなかったんです。

―― それは、なぜでしょうか?

植本 私と母とはずっと折り合いが悪かったんです。長女の出産のときは2週間来てもらい、何とか我慢していました。でも二人目になると、やっぱりうまくいかなかった。特に、母が育児で疲れてくると上の子に切れたりする様子を見るのが耐えられなくて……。「申し訳ないけれど、帰って」とお願いして、一週間で帰ってもらいました。