逃げ出したくて、外に好きな人をつくっていたのかも。

―― 2冊目の『かなわない』では、3・11の地震以降の不安、子育ての行き詰まり、写真家としての仕事と育児のジレンマ、母であることに悩む様子がひしひしと伝わってきました。

 忙しくて体調も悪いときにも休めなくて、子どもたちに対して無表情になるとか、せっかく作ったご飯をわざとこぼして遊び始めたりして、全部が嫌になるとか。それで台所にこもるけど、下の子が追いかけてきて、一人になれない・・・とか! 胸が痛いくらいリアルな日常が書き綴られていますね。

植本 そう、つらかった…(笑)

―― その中で、好きな人ができて、離婚をしたいと何度か旦那さんに切り出すけれど「好きな人がいてもいいけど、子どもが小さいうちは離婚しない」と返されるくだりも出てきます。

植本 子どもが小さいときはすごくグラグラしてました。とにかく家から逃げたくて、逃げるために好きな人をつくったりもしていた気がするんですよね、今考えると。

―― 植本さんのこれまでの本はブログに日記として公開されていたものがベースとなっています。日々起こることと同時進行で、日記を一般公開されている。夫や家族もいつでも読めるオープンな環境であるわけですよね。その勇気や覚悟、すごいです。

植本 よく言われるんですけど、自分ではピンとこなくて。基本的に、誰かに読まれることで恥ずかしいとか、私自身が傷つくことは書いていないんですよ。恥ずかしさの基準が人よりも低いんだと思います(笑)。

ありのままを書くということとはどんなに醜い感情も認めること。

―― 育児中に「逃げたくなるほどしんどい」という気持ちは、実は多くの人が体験していることかと思います。でも多くの人はその気持ちに蓋をして、日常を一歩でも前にと進んでいるのかな、と。そこをあえて本という形にして残したのはなぜですか?

植本 「気持ちに蓋をしなくていいんだよ」っていうことを私は思うし、伝えたいんですよね。蓋をすると絶対漏れてきて、いつかそのことに向き合わなくちゃいけなくなると思うんです。

―― なるほど。植本さんは、日常を切り取り、書くことや写真を撮ることを通じて、蓋をしたくなるような気持ちと向き合ったという部分もあるでしょうか?

植本 客観視できるし、考えが整頓できますよね。公に表へ出さなくてもいいんですよ。ただ正直に、自分が思っていることをアウトプットする。どんなに醜いことであっても自分が感じたことを書くことで、後々、どうしてこう思ったんだろう、とかどうしてこう考えたんだろう、と振り返ることもできます。そのときは分からなくても、状況が変わったらどうしてだったのか、分かったりするんですよね。混乱しているときほど、文字化するのはおすすめです。

―― 最近はSNSなどに書く人も多いかな、と思いますが…。

植本 そうですね。あ、でも、自分の書くことが誹謗中傷になったり、誰かのプライバシーを傷つけたりすることはないように、というのは、最近すごく気を付けています。

 私の場合、結構辛辣なことも書いてるんですが、それを書いても大丈夫な人のことしか書かないですね。旦那さんとか、友達でも、何か書いたことで怒ってきたとしたら、そのときはちゃんと面と向かって言い合いができる関係の人のことだけを書いています。だから、向き合えない人のことは書けませんね(笑)。