子育てのサポート 「血縁がすべてじゃない」

―― 実のお母さんとの関係がうまくいかず、頼れる身内も近くにいない状況。小さなお子さん二人を抱えて仕事もして、夫も忙しくて家にほとんどいない、という中で、お子さんの預け先はどうされていたのでしょうか?

植本 次女が数カ月のときに長女の保育ママさんを見つけて、次女自身も1歳になって保育室がようやく見つかったんですけど……それまでは仕事もほとんどできませんでしたね。何とかなるだろうと思ったけれど、何とかならなかった。家に閉じ込められてるような状態はつらかったです。

―― そんな中でも植本さんは、身近なお友達など、上手に色々な人の手を借りていらっしゃるのが印象的です。本の中にも、仕事で長く不在になってしまうときや、お子さんの風邪が重なったりしたときに、色んな友人にベビーシッターをお願いするシーンが出てきます。身内の手を借りずに子育てをしてきて、今、改めて思うことはありますか?

植本 これまで9年くらい育児をしてきて、家族について私が思うのは「“家族”は、血縁がすべてじゃない」ってことですね。うちは、血縁の家族が……、自分の母親が特に嫌だから。安心して預けられないんですよね。だから、家族のように信頼できる友達に手助けを頼む。

 出産したら実のお母さんに手伝ってもらうケースは多いと思います。でも、もし私みたいに自分がそれで苦しくなるのなら、親ではなく友達に助けを求めれば、きっと何らか手を差し伸べてくれるって、思うんです。

―― 共働き家庭の子育てで、両親やきょうだいなどの助けが得られる環境はとても心強い。でも、物理的な距離や年齢、相性の問題などで難しい場合は気持ちを切り替えて、自分に合う方法を探したほうが健全でいられますね。

植本 そう思います。私に関して言えば、イライラする身内に頼むよりも友達に頼んだほうが心が安定するし、子育てで感じた孤独や心細さからもずいぶん解消される。私の気持ちが安定している状態は、結果的に子どもにとってもよかったですね。

母との絶縁 されて嫌だった子育ては絶対したくない

―― 『家族最後の日』に収められている「母の場合」では、夏にご実家へ帰省された1日の間に、「やっぱりどうしても母とは合わない」と絶縁を決めたことが描かれています。親との関係で色々と思うところはあるかと思いますが、「こうありたい」「これだけはしない」というような子育てのポリシーはありますか?

植本 やっぱり、自分が親にやられて嫌だったことはしないでおこう、とは思っています。私は、特に、親が自分とちゃんと向き合ってくれなかった、という思いが強くて……。それが元で、人に言いたいことを素直に言えなかったりする、性格のゆがみみたいなものがあると思うんですよね。だから子どもたちには、なるべく向き合ってあげたい。家にいるときは、できる限り子どもの話をしっかり聞くことを意識しています。

 ただ、特に下の娘は私に似ているところがあって……。空気を読み過ぎて、自分を曲げてでも人に合わせるところがある、と保育園の先生に言われたこともあるんです。だから心配。伸び伸び育ってほしいです、本当に。

―― 子どもの個性に合わせて、意見を引き出したり、話を聞いてあげたり。お子さんへの愛を感じます。それでも、やっぱり感情的に叱ってしまうこともありますか?

植本 それは、いっぱい、あります。娘たちは小3と小1になりましたので今はそうでもないけれど、やっぱり子どもがまだ小さくて手がかかる時期は、感情的に叱ってしまったこともありました。特に『かなわない』を書いてたころ(長女が3歳、次女が1歳半ごろ)っていうのは、すごくしんどくて。

 いつも、家から逃げ出したいと思っていましたね。