子どもが犯罪被害に遭わないために親が知っておくべき知識について、地域の安全や犯罪予防を研究する小宮信夫立正大学教授が、実際の事件や事故を基に検証しながら解説する連載。今回は、海外旅行で盗難被害に遭わないためのポイントについて、小宮教授にお話を伺いました。この夏、長期休暇を利用して家族で海外旅行に行く計画のあるデュアラーは、ぜひ参考にしてみてください。

「写真を撮りましょうか?」だけでなく、「写真を撮ってください」も危ない?

――前回、テロ事件の被害に遭わないための心得についてお話を伺いました。今回は、盗難被害に遭わないためのポイントを教えてください。

 前回も少しお話ししましたが、グローバルな基準で見ると、日本人は危機意識が低い。外国人は、日本人のことを、よく言えば「人を信じやすい」、悪く言えば「だまされやすい」と思っています。そのため、我々日本人は「カモになりやすい」ということを、まず肝に銘じておきましょう。

 「オレオレ詐欺」同様、私たちは皆、「自分だけはだまされない」と思っています。ですが、相手は一枚も二枚も上手(うわて)だから、まんまとわなにはまってしまう。実例をいくつか挙げましょう。

 例えば観光地で写真を撮っていたとします。親切そうな人が「よかったら写真、撮ってあげましょうか?」とニコニコ顔で近づいてきても、「お願いします」とカメラを渡してはいけません。そのままカメラを取られてしまいます。そういうときは、「No, thank you.」と丁寧に断ってください。どうしても自分を写したいのであれば、こちらから誰かに頼むのがおすすめ。そのとき頼む相手は、できれば高齢の夫婦がよいでしょう。

 では、ここで問題。反対に「写真を撮ってほしい」と頼まれたときは、どうすればいいでしょうか。あなたなら、どうしますか?

――頼まれるのであれば……カメラを取られる心配はないですし、承諾して撮ってあげてもいいのではないでしょうか。

 そう思いますよね。実はこれ、僕自身が実際に体験したことなんです。結論から言うと、危険な場合もあるんですよ。では、そのときのことをお話ししましょう。

 観光地で、旅行者風の人に「写真を撮ってくれないか」と言われて快諾しました。相手のカメラを借り、撮影して、カメラを返そうとすると、その人は「こっちの場所でも撮ってくれますか。こっちのほうがいい感じなんで」と言いながら、少しずつ移動していきます。つられて僕もカメラを構えたまま移動すると、どんどん別の場所に移動していきます。

 そのとき僕は「どこまで行くんだよ」と思い、周囲の景色を見てみました。すると、その人が招き入れようとしている場所は、簡単に入り込めて、入り込んだら道路から見えない場所でした。つまり、

1. 入りやすい場所
2. 見えにくい場所

という、犯罪が起きやすい場所の2つの特徴を兼ね備えていたんです(2つの特徴についての詳細は、「怪しい人に気をつけて」が子どもを危険に巻き込むという記事を参考にしてください)。

 そこで「これは、おかしい」と思い、「もう行かなくちゃ」と言って、カメラを返しました。あのまま一緒に移動していたら、強盗被害に遭っていたかもしれません。