嫌だったことを深く追求すると悩みが深くなりがち

――そうなんですね! もしお子さんと話してみて、例えば学校でお友達に嫌がらせをされたとか告白されたら、どうされているのでしょう。ついつい、親が介入したほうがいいのかなとか思ってしまいますが。

Shusui学校は毎日ドラマや事件が起きているものですが、僕も妻も先生ではないからずっと一緒にはいられない。僕や妻は、子どもたちが通っている学校の先生に120%の信頼をおいて預けているわけです。だから学校行事やボランティアには120%参加しますが、もめたとか取った取られたなど何かあっても、そこは一切口を出したことはありません

 ただ子どもの様子に気を付けてはいます。朝、長女と次女に対しては、無意識のうちに「おはよう、どう眠れた? 今日は何があるの?」と声をかけるようになっていますね。

 帰ってきてからも、不機嫌にカバンをどん! と置くこともあるんです。そうしたら「どうしたの? 今日」「ケンカした?」「先生に怒られた?」「宿題忘れたの?」などと聞きますが、ポイントは深く追求しないこと。深く深く追求していくと、悩みも深くなっていきがちです。だから「そうか。それは嫌だったね。大丈夫だよ! 寝ればさ、明日になったらまた新しい風が吹くんだから、気にしないでいいじゃん! 人生なんて長いんだよ」と、気楽な声掛けをしています。一緒になって感情移入すると、トラブルのあった子どもや先生に対して、親も頭にきてしまうじゃないですか。そういうことはしないようにしていますね。

――では、今後の活動についてお聞かせください。育音ではどんなことをしていきたいですか。

Shusui:ボランティアで施設を訪問すると、自分という小さな存在が、もしかしたら人の役に立ったかもしれないと感じることがあります。この1年は、もっと続けなければならない活動だという思いが深くなってきている。

 今は育音でのボランティア活動を「育音ふれあい会」として障がい者施設中心に行っていますが、ゆくゆくは小学校、幼稚園、保育園など子どもが集まるところを訪れ、音楽の楽しさ、考える力、家族の絆などを感じてもらえるようになりたいと思っています。

 一方で、僕自身、そういう「現場」で勉強し続けたいという気持ちもあります。先生、親御さん、障がいをお持ちの方から、たくさんの問題提起をしてもらいたい。そうした問題提起は、まだまだできていない自分の子育てのためにも勉強になるんです。

 子育てはエンドレスですし、答えがありませんよね。偉い先生や教育学者さんがこうしたほうがいいと言っても、わが子には当てはまらないことがほとんどではないですか? 自分なりの、その子に合ったやり方が必要なんですよね。

 だから、性別月齢問わず、多種多様な子どもたちと触れ合うことで、常に勉強していけたら、そのためにも音楽と触れ合ってもらえる活動を継続していけたら、幸せだなと思っています。

Shusui

Shusui(しゅうすい)

本名は小杉周水(こすぎ・しゅうすい)。1976年生まれ。東京都出身。生まれつき目に障害を持っていたこともあり、両親の勧めで6歳からクラシックピアノを習い始める。文化学院卒業後、ロンドン留学を経てポップユニットcanna(カンナ)を結成し、1999年にデビュー。作家としても活躍し、2005年には提供した楽曲“修二と彰”による『青春アミーゴ』が大ヒット。2014年には初の絵本CD『トムテの森のクリスマス』(アイエンタテインメント)を、翌年には『アフリカゾウのなみだ』(小学館)を出版。また自らの子育て体験を基に育音(Iku ON)プロジェクトを設立し、講演活動なども積極的に行っている。現在、東京音楽大学映画放送音楽部のソングライティングコースにて客員教授も務める。オフィシャルブログは育音(Iku ON)ブログ。オフィシャルサイトはhttp://shusui-stockroom.com/


Hanno Green Carnival 2017 ~マナブ アソブ ツナガル~」では、「エリア ヤルヴィ(駿河台大学)」のメーンステージとなる「ステージ メッツァ」に登場(5月7日/12:10~)予定。

(取材・文/山田真弓 撮影/小宮山裕介)