母親のようには子どもたちの気持ちを理解できないから話を聞く

――お子さんは中学1年生、小学校3年生、年長さんの3姉妹だそうですね。女の子3人で困ることはありませんか。

Shusui:あまりないかな。娘たちからは「パパ」とは思われても、「男」とは思われていない節もありますね(笑)。お風呂も一緒に入りますし。

 もしかしたら、自分自身が子どもなのかもしれない。娘たちの父親になる前から子どもと同じ目線を持っているからなのか、気づくと子どもに囲まれてるようなタイプで、今も幼稚園に末っ子を送っていくと、いつも周りに5~6人の子どもの輪ができていますね。1時間くらいずっと子どもたちにちょっかいを出されたり、「ねえねえ」と話しかけられていたりしているので、他のお母さん、お父さんたちはもしかしたら「保育の補助の人」と思っているかもしれません(笑)。

――Shusuiさんが子育てをする中で、決めていることはありますか。

Shusui:最低限、ご挨拶をしてねとか、靴を脱いだらそろえてねとか、お箸の持ち方をきちんとしてねといった、日々の生活のルールはありますが、ただそれをあまり大人目線で「○○しなさい」とは言わないようにする、ということでしょうか。

 以前は僕も半分母親気分で口うるさく言っていたんです。「手洗い、うがいしなさい! しないとインフルエンザになっちゃうでしょ!」とか。でも、そうやっていると「分かってるよ!」とうっとうしがられるようになってしまう。月齢にもよりますが、3歳、4歳、幼稚園生くらいまでは、口うるさく言われても泣きながら言うことを聞くんです。でもそれが小学校中学年、高学年くらいになると反発するようになります。

 それであるとき、反発されないようにするにはどうしたらいいか、妻と話し合い、僕は口うるさく言わないようにしようと決めたんです。

――具体的には、どんなふうに多感な時期に入ったお子さんに、言うことを聞かせるんでしょう。

Shusui:例えば、反抗期を迎えた長女に対し、ママはどうしても口うるさくなってしまう。僕も一緒になって口うるさく注意していると、長女は逃げ道がなくなってしまう。だから僕は「そうそうそう、モネちゃんさ、パパもできないよ。脱いだら脱ぎっぱなしにしちゃうし、帰ってきて手を洗うのなんてめんどくさいよね。休みの日は1日中パジャマでいたいよね」と娘に寄り添うことにしたんです。すると、「そうなの、パパ!」と、話を聞いてくれるようになる。「世の中のお母さんてそうなんだよね」と素直に聞くようになるんですよ。もちろん、こういう話をするよということは、事前に妻に伝えておくわけです。そうでないと悪口になってしまいますから。

 僕は育児は、夫婦の協力が大切だと思っています。特に長女や次女が小さいころに感じていたのですが、ママだけが頑張るのでも、パパだけが頑張るのでもダメなんです。お互いのバランスがすごく大切。

――バランスを取るための秘訣はありますか。

Shusuiパパとママがいかにコミュニケーションを取るかにかかってきますね。うちは、10代のころからの付き合いで、半分友達のようでもあり、コミュニケーションはかなり取るほうだと思います。

――夫婦間のコミュニケーションを密に取り、お子さんの気持ちに寄り添う…なかなかできることではないですよね。

Shusui:僕もできていませんでしたので日々勉強です。そういう意味では、例えば幼稚園の送りの時間に子どもたちの相手をしつつ(笑)、先生たちが子ども同士のとっくみ合いのけんかをどうしているのかといった「プロ」の対処方法を現場で勉強させてもらっています。やはり、現場が一番なんです。インターネットで調べても育児書で学んでも、それが自分の子どもに当てはまるかどうかは分かりませんから。

 他にも幼稚園の「食育講座」とか「子育て○○」「健康法」といった講座には積極的に参加するなど、勉強できる機会があればしています。

 先ほども言いましたが、思春期、反抗期に入った子どもに対しては、小さいうちと違って、怒るもかわいがるも全力でやればいいわけではない。だから子どもたちの話を「聞く」ということを、常に意識しています。

――お子さんから話を聞き出すのは難しくないですか。学校の様子を聞き出そうとしても、なかなか自分からは話してくれないのではないかと思うのですが。

Shusui:僕は自分で出産していないし、仕事もあるので朝から晩まで子どもたちと一緒にいることもほとんどないですので、母親のようには子どもたちの気持ちを理解できていないと思っています。ただ、分からないことを分からないままにしておきたくないんです。だから、お風呂でじっくり話を聞くようにしています。特に次女、三女はまだ僕がほとんど入れていますし、娘たちも遊べるからパパと入りたがる。一緒になってお風呂でおままごとなどをしながら、リラックスするうちに、お友達ともめた話や、誰々ちゃんが悪口言っていたとか、先生がこう言ったのが嫌だったという話をしてくれるんです。

 「今日学校楽しかった?」と聞いて「うーん…」と歯切れが悪ければ、徹底的に話を聞きます。1時間でも2時間でも。そうやって体と共に心もほぐれると、「パパには何でも話せるんだ」と思ってくれるんです。