長女が生まれてから丸1年、べったり育児した

――育音はいつごろから本格化したのでしょう。

Shusui:実際に「育音」というプロジェクト名を打ち出して活動し始めたのは3、4年くらい前ですが、現在12歳の長女が生まれたころから考えてきました。当時、cannaの活動を休止してソングライターやプロデューサーとしてスウェーデンで生活をしていたのですが、スウェーデン人の影響は大きいと思います。

――育児に関してですか?

Shusuiスウェーデンの男性たちは、福祉や教育、そして育児に対してものすごく積極的なんです。女性が社会で働きやすく、男性がハウスハズバンドを務めやすい国というか。

 僕はもともとザ・ビートルズが大好きで、ジョン・レノンが息子のショーンが生まれて「ハウスハズバンド」として現役から少し身を引いて、子育てを中心に作詞・作曲を手掛け、負担のない程度にコンサートをしていた姿に、すごく憧れがありました。

 ところがスウェーデンのパパたちは、スタジオで作業をする場合にも朝9時から作業をスタートし、16時にはガールフレンドや妻などパートナーのお迎えで帰っていく、半ばハウスハズバンドのような生活が当たり前だったんです。日本ではレコーディングの開始時間は16時、終了時間は朝5時で「始発で帰れてよかったね」という不健康を絵に描いたような生活を送っていた僕は、驚きました。

 しかも、スウェーデンのクリエーター男性たちは、生まれたばかりの赤ちゃんから2~3歳の小さな子どもを抱っこ紐やベビーカーでスタジオまで連れてくるんです。

――作業中はどうするのですか!?

Shusuiあやしながらレコーディングの打ち込みなどをするんですよ! 「ちょっと待ってて」と言ってミルクをあげる人もいましたし、基本的に子どものサイクルに合わせて仕事をするので、お昼も12時くらいになると、サッと作業を切り上げてランチブレークのために近所のカフェに移動。子連れでご飯を食べながら、お互いの文化の話などをした後、13時になるとスタジオに戻ってまた作業。そして16時になるとパートナーに連れ帰られる(笑)。これが金曜日になろうものなら、午後はもはや働かない。13時には帰って週末の準備をするわけです。地下鉄に乗っていても日中、抱っこ紐で乳幼児を連れているのは男性が多いくらいでしたね。そういう男性が積極的に育児参加する社会に触れて、とてもいいなと思いました。

 もともと、僕は家事もしてきましたし、中学、高校くらいのころには幼稚園や保育園で働きたいと思うくらい子どもが大好きでしたので、抱っこしたりおんぶしたりしたまま、家事をすることに何の苦もなかったんです。しかも長女が生まれたころは表舞台に立っている時期ではなかったので、丸1年ほど、べったり育児をしようと決めました。おむつ替えも離乳食作りも、妻と協力しながらやりました。

 今は幼稚園のお弁当作りなどもしますし、家事、育児をするのは普通のことだと思っています。

――実際に育児をべったりしてみると、当然楽しいだけではない時間があったと思います。音楽の仕事をされていて、自分の聞きたい音楽が聞けなくて困ったということはないですか。

Shusui:育児は大変ですけど、ただ音楽については、困ったことはないですね。僕は音楽が生活の中にないと駄目で、わが家では常に音楽が流れていますが、子ども用のBGMにしようというサービス精神はないんです。今日も朝5時に起きてお弁当を仕込んだのですが、子どもたちが起きてきても、マイケル・ジャクソンがかかっているし、R&Bが流れたり、ガンズ・アンド・ローゼズがかかったりする。でもそれでいいんだと思いますよ。親の趣味や嗜好は子どもも分かるもの。本当に良い音楽は、子どもも好きですから。

 もちろん車で移動しているときなどは、延々ディズニー映画の音楽やジブリ映画の音楽をかけることもありますが、それでも日ごろから自分の趣味の音楽を流していると、子どもたちも自然と受け入れるようになります。

 うちの子どもたちはマイケル・ジャクソンの『スリラー』が大好きですよ。