中学受験といえば、これまでは小学3年生の2月から大手進学塾に通い始め、そこから3年かけて中学受験に必要な4教科を勉強するというのが典型的なスタイルでした。ところが、数年前からこうした知識を求める教科入試とは別に、「思考力」や「表現力」を問う入試が増えています。その背景にあるのが、2020年度から実施される大学入試改革です。2017年度入試はそれが顕著に表れ、入試の多様化が一段と進みました。では実際、どんな入試が実施されたのでしょうか? 中学受験に詳しい安田教育研究所代表の安田理さんに聞いてみました。

変化する中学受験 入試の多様化が一層進んだ2017年度入試

 「思考力入試」「プレゼンテーション入試」「自己アピール入試」「リベラルアーツ入試」「AL入試(アクティブ・ラーニング入試)」「タラント発見・発掘入試」・・・・・・。

 さて、これらは一体何の入試か分かりますか?

 これらは2017年度に実施された私立中高一貫校の入試の一部を挙げたものです。名称だけではそれがどんな入試なのか分かりづらいですよね。実はこうした新スタイルの入試が今、私立中高一貫校で急激に増えています。

 その理由を安田さんはこう話します。

安田教育研究所代表の安田理さん
安田教育研究所代表の安田理さん

 「2020年度から国の方針で大学入試の内容が大きく変わることは、既に皆さんもご存じのことかと思います。具体的なところでは、いまだ不透明な部分がありますが、出題の内容が従来の『知識』を中心としたものから、『思考力』や『表現力』も重視したものへと大きく変わろうとしています

 「その影響を受け、中学受験においても、入試のスタイルが変わりつつあります。中学入試といえば、これまでは大手進学塾に通い、そこで中学受験に必要な4教科(国算理社)を3年間かけて勉強するというのが典型的なスタイルでしたが、一部の私立中高一貫校で思考型や表現型の入試が実施されるようになったことで、大手進学塾に通わなくても中学受験をすることが可能になってきているのです」

 教育コンサルティング会社のエデュケーショナルネットワーク(東京都千代田区)の調べによると、リーマンショック以降、不況の影響で下がり続けていた中学受験者数が、2016年度の首都圏(群馬県を除く1都5県)の中学入試で500人ほど増えたことが分かりました(詳しくは『共働き中学受験 基本のキ』の「中学受験 リーマンショック以降、久々の受験者増加」を参考)。2017年度入試ではさらに約800人増え、中学受験者数は5万6000人(※小6児童数は33万7000人)になり、増加の傾向にあります。

 「この増加の背景にあるのもまた、2020年度の大学入試改革による影響と考えられます。入試の内容が変わることは分かっていても、具体的にどう変わるかが不透明な今、確実に大学進学が保証されている付属校への人気が高まっているのです。また、思考力や表現力といった知識とは異なる力をつけるには、高校受験がない私立中高一貫校のほうが有利と考え、中学受験を選択した家庭が増えたと見られます

 「このように大学入試改革への強い関心と不安によって、2年前から私立中高一貫校への期待が再び高まっています。こうした期待を受けて、各私立中高一貫校はそれに全く触れないでいたら、受験先として選んでもらえない。そこで『わが校は大学入試改革をしっかり意識していますよ』というメッセージを込めて新設したのが、これらの新しい名称の入試なのです」

 では、その内容はどんなものなのでしょうか?

資料提供:安田教育研究所
資料提供:安田教育研究所