「グローバルな環境で、子どもにより高いレベルの教育を受けさせたい」と、子どもの将来の可能性を考えて、親子で日本を飛び出す海外移住に興味を持つ人は多いでしょう。海外で会社員として働く形態には、主に「海外駐在」と「現地採用」の2種類がありますが、グローバルライフプランを現実的に考えるためには、海外移住に関わる費用をはじめ、仕事や物価、治安、教育環境など現地の情報を総合的に押さえたうえで、後悔のない決断をしたいものです。

 シンガポールで現在2歳の娘を育てるファイナンシャル・プランナー(FP)花輪陽子さんによるこの連載では、実際に現地で子育てをするお金のプロの視点から、現地採用の基礎知識や子育て事情のリアルを伝えてきました。最終回となる今回は、シンガポールでの住まい選びのポイントと注意点について生活者視点のアドバイスをもらいました。

日本とは慣習が違う、シンガポールでの賃貸物件探しの注意点

 ファイナンシャル・プランナー(FP)の花輪陽子です。今回は現地採用や親子留学の方のための、シンガポールでの住まい選びのポイントと注意点をお伝えしたいと思います。シンガポールでの賃貸物件探しは日本とは慣習が異なるので注意点が多くあります。

 賃貸物件の種類はコンドミニアム、HDB(日本でいう公団住宅のようなイメージ)、アパートメント、サービスアパートメント、戸建住宅などがありますが、多くの日本人がコンドミニアムかHDBを賃貸しています。コンドミニアムはセキュリティーがしっかりしており、物件によってはエレベーターが自分の部屋に直結ということもあります。

 また、プールやテニスコートなどの共有施設が充実していますが、その分共益費が高くなります。HDBは家賃が安い代わりに共有施設がコンドミニアムほどは充実しておらず、ローカルの人との近所付き合いも多少あります。日本では家具なし物件が多いですが、シンガポールでは一部家具付き、全部家具付きなど家具や家電付きの物件も多いです。ただし、その分家賃は上がるのでIKEAやベスト電器などで安い家具・家電を自分でそろえるなど検討の余地があります。

日本人に人気のエリア ご近所同士の“お付き合い”も

 日本人が比較的多いエリアとしては、日本スーパーの近くのリバーバレーや通勤が便利なノベナなどが挙げられます。なかには日本人世帯が大半のコンドミニアムもあるほどです。日本人が多い集合住宅だと日本人学校への通学バスのピックアップポイントになるなどのメリットはありますが、お付き合いも発生するので苦手と感じる人もいるようです。

 私は最初の2年間はリバーバレーのコンドミニアムに住んだのですが、慣れてきたので次からは郊外でもいいし、HDBに住んでみてもよいかなとも思います。コンドミニアムの共益費は高く、元が取れるくらい使い倒すことが難しいので自腹で家賃全額を払うとなれば安価なHDBも選択肢になります。ローカルの友達の自宅にも招いてもらうことはありますが、新しく、立地もよいHDBもたくさんあります。

日本でいう公団住宅に当たるHDBは家賃が安い代わりに、共有施設がコンドミニアムほどは充実していないのが特徴
日本でいう公団住宅に当たるHDBは家賃が安い代わりに、共有施設がコンドミニアムほどは充実していないのが特徴