「毒親」という言葉をご存じでしょうか。様々な定義がありますが、虐待や暴言、ネグレクト、過干渉などで、子どもを不幸にするような行動をする親のことを指します。ここ数年、書籍やメディアなどでもよく目にするようになったこの言葉。ただ、言葉は違っても「毒親」自体は、ずっと以前から存在したと言われています。

 子育て真っ最中のDUAL読者のなかには、「毒親」に育てられた苦しみを抱えていたり、自らの子育てにおいて「私って毒親?」と心配になったりしている人も、多くいると思います。DUAL5月号では、そんな毒親について特集として取り上げ、「毒親」になってしまう理由や、その苦しみからの脱却方法などについて、考えていきます。

 特集第3回は、毒親予備軍からの脱出法や子育て中の心の休ませ方について紹介します。話を聞いたのは、NPO法人メンタルレスキュー協会理事長で心理カウンセラーの下園壮太先生。講演やカウンセリングを行っている下園先生に、「自分やパートナーが毒親予備軍かも?」と思ったときの対処法を伺います。

【もしかして、わたし毒親予備軍? 特集】
第1回 「親が毒親だった」「自分が毒親かも」いずれも7割
第2回 心の葛藤を「子どもとの関係」で解決しようとする毒親
第3回 あなたも例外ではない!毒親予備軍からの脱出法 ←今回はココ
第4回 共働きっ子から親への反発 負い目に苦しめられる
第5回 親から子、孫へ…毒親の負の連鎖を断ち切る方法

 「イライラしてつい、きつい言葉で子どもに当たってしまった・・・私って、毒親予備軍?」 そう不安になったとき。自己嫌悪になったとき。心が疲れたとき。親として、自分の状態をどう見直し、整えたらよいのか。今回は、心理カウンセラーとして多数の親子・子育ての悩みに応じてきた下園壮太先生に、話を聞いた。

 下園先生は、著書『母が重い! しんどい「母と娘の関係」を楽にするヒント』の中で、いわゆる毒親と子ども(特に、母と娘)の間に起こる葛藤を、どう乗り越えたら良いか記している。しかし、下園先生自身は、「毒親」という言葉は基本的には使っていないのだという。というのも、「パワハラなどと同じで、毒親という言葉があるために、負の記憶にばかり目が行く」ことを恐れるためだ。

 そんな下園先生は、“親子”というものを、こう捉えている。

 「もともと、親子というのは確執があるもの。近年、“仲良し親子”がメディアで取り上げられたりするようになりましたが、親子は分かり合えない、というのは、昔からのデフォルトです。だから親子関係について、あまり幻想を持たないほうがいい

 親として、よかれと思ってしたことが、子どもにとっては嫌な思い出になっているかもしれない・・・・・・といったことも、「子育てにおいて、それくらいは、織り込み済み」と下園先生は考える。

 下園先生は、「自分の親が毒親だった」という悩みを持つ子育て世代の相談にも多数乗ってきた。そういう人は、「自分もまた、毒親的振る舞いをしてしまうのではないか」と恐れを抱いている場合がある。特に、親の老いなどをきっかけに、自分の親について改めて考え、毒親の思い出を語る人が多いのだという。

 それに対する下園先生からのアドバイスは、こうだ。

 「自分の親が毒親だったことを思い出したときは、その嫌な思い出を反すうし過ぎないように、気を付けたほうがいい。あんな嫌なことがあった、というのを思い出すと、そこで一度嫌な気持ちになる。すると、その嫌な気持ちになった状態で、さらに、ネガティブな記憶を掘り起こす。感情的になった状態のまま、ネガティブな記憶を自ら反復し続けて、結果、『私はひどいことをされた』という思いをさらに強めてしまいます

 このような場合カウンセリングでは一度、感情を全て吐き出してもらう。全て吐き出すというところがポイントだ。一人で考えているとこれが中途半端になりやすい。全ての感情を吐き出したら冷静になってくるので、そこでもう一度物事を見るように促す。すると、「例えば、子どものころあれをするな、これをするなと言われて嫌だったという思い出が、『母は自分を守ってくれていたのかも』という解釈に変わる。そうすると、記憶の風化が起こっていく」のだという。

<「毒親予備軍かも・・・?」と不安になったら>

✓ そもそも親子は確執のあるもの

✓ 親との嫌な思い出を反すう、増幅させ過ぎないよう注意

<次ページからの内容>
・子育て中に起こりがちな負のサイクル
・負のサイクルに陥らない・断ち切る方法
・相反する気持ちを抱えているのが人間
・夫婦関係での心の整え方
・毒親予備軍から脱するために大事なこと