「イライラしてつい、きつい言葉で子どもに当たってしまった・・・私って、毒親予備軍?」 そう不安になったとき。自己嫌悪になったとき。心が疲れたとき。親として、自分の状態をどう見直し、整えたらよいのか。今回は、心理カウンセラーとして多数の親子・子育ての悩みに応じてきた下園壮太先生に、話を聞いた。
下園先生は、著書『母が重い! しんどい「母と娘の関係」を楽にするヒント』の中で、いわゆる毒親と子ども(特に、母と娘)の間に起こる葛藤を、どう乗り越えたら良いか記している。しかし、下園先生自身は、「毒親」という言葉は基本的には使っていないのだという。というのも、「パワハラなどと同じで、毒親という言葉があるために、負の記憶にばかり目が行く」ことを恐れるためだ。
そんな下園先生は、“親子”というものを、こう捉えている。
「もともと、親子というのは確執があるもの。近年、“仲良し親子”がメディアで取り上げられたりするようになりましたが、親子は分かり合えない、というのは、昔からのデフォルトです。だから親子関係について、あまり幻想を持たないほうがいい」
親として、よかれと思ってしたことが、子どもにとっては嫌な思い出になっているかもしれない・・・・・・といったことも、「子育てにおいて、それくらいは、織り込み済み」と下園先生は考える。
下園先生は、「自分の親が毒親だった」という悩みを持つ子育て世代の相談にも多数乗ってきた。そういう人は、「自分もまた、毒親的振る舞いをしてしまうのではないか」と恐れを抱いている場合がある。特に、親の老いなどをきっかけに、自分の親について改めて考え、毒親の思い出を語る人が多いのだという。
それに対する下園先生からのアドバイスは、こうだ。
「自分の親が毒親だったことを思い出したときは、その嫌な思い出を反すうし過ぎないように、気を付けたほうがいい。あんな嫌なことがあった、というのを思い出すと、そこで一度嫌な気持ちになる。すると、その嫌な気持ちになった状態で、さらに、ネガティブな記憶を掘り起こす。感情的になった状態のまま、ネガティブな記憶を自ら反復し続けて、結果、『私はひどいことをされた』という思いをさらに強めてしまいます」
このような場合カウンセリングでは一度、感情を全て吐き出してもらう。全て吐き出すというところがポイントだ。一人で考えているとこれが中途半端になりやすい。全ての感情を吐き出したら冷静になってくるので、そこでもう一度物事を見るように促す。すると、「例えば、子どものころあれをするな、これをするなと言われて嫌だったという思い出が、『母は自分を守ってくれていたのかも』という解釈に変わる。そうすると、記憶の風化が起こっていく」のだという。