国内外で活躍するピアニストの三浦友理枝さん。中学受験とピアノのレッスンを両立し、高校卒業後は英国の王立音楽院に留学し、首席で卒業しました。しかし、その後も“将来の不安”は三浦さんを悩ませ続けました。今回は、ピアニストという素晴らしい職業の“光と影”について、せきららに語ってもらいました。

【インタビュー上編】
三浦友理枝 ピアニストの夢をかなえた“努力とお金”

大学進学後に抱いた将来への強い不安。デビューが決まった瞬間の安堵

DUAL編集部 三浦さんは留学先の英国王立音楽院で、大学でも大学院でも首席という素晴らしい成績で卒業されました。

三浦友理枝さん(以下、敬称略) 自分の希望で英国まで留学して、もしこれでプロになれなかったらどうしよう、と不安だったので必死でした。大学3年のころ、レコード会社のエイベックスから声をかけていただいたときは「これでプロデビューできる!」と心底ホッとしました。私が今、一生懸命仕事をしているのは、将来に強い不安を抱いていたそのころの自分に報いたい、という気持ちもあるんです。

―― それくらい、とてつもないプレッシャーがあったのですね。もしプロのピアニストが難しいとなった場合、他にどんな選択肢があったのでしょうか。

三浦 基本的には、ピアノの先生など教える仕事でしょうね。あとはレコード会社や音楽事務所などで会社勤めをする人もいます。

 今振り返っても、私はとても運が良かったと思います。ヤマハで高いレベルの音楽教育を受けられたり、出場したコンクールで賞をいただいたり、学費免除や奨学金といった助けもあったりして、幸運がいくつも重なってやっとプロになれた。高いお金を払えば必ずなれるというものではないし、努力だけでどうにかなるものでもありません。「どうすればプロのピアニストになれますか?」と聞かれても、これといったノウハウは何もない、そんなシビアな世界ですね。

―― 大学院を卒業後、日本に帰国して音楽活動を本格的にスタートしました。海外で活動するという選択肢もあったのでしょうか。

三浦 正直、クラシックの本場である欧州で活動したいという希望はありました。でもアジア人が英国で就労ビザをとるのは非常に難しいんです。ましてクラシックの音楽家なんて、EU圏内で十分間に合っているんですよね。よほど才能のある人が、弁護士なども含めて色々準備して、粘り強く交渉してやっととれるかどうか、というのが実際のところです。