小さく産んで大きく育てるは時代遅れ
出生体重は3000g以内がいい? → ウソ 3000g以上が望ましい
「『小さく産んで大きく育てる』はお産がラクで、医療事故が少ない、妊婦さんと赤ちゃんの体力消耗も少なくて済むというメリットもあり、以前はトレンドでした。でも今は小さく生まれることのリスクが重要視されつつあり、妊娠時の指導も以前の一律8kg制限から、妊娠時の妊婦のBMIによって異なる指導が行われるようになりました」と話すのは母子健康コーディネーターとして、妊活・妊娠中の食についての共同研究を行っている細川モモさん。「戦時中、妊娠していた女性が食事を満足に食べられなくなった結果、妊娠高血圧症の発症率が減ったことをヒントに、日本でも厳しい体重制限が行われ、『小さく産んで大きく育てる』と言われるようになりました。8kgという数値に根拠はありません。今とは異なり、妊婦の体型を問わず厳しい体重増加制限をかけたことや、やせ女性の増加、妊婦の喫煙増加などの問題が重なり、日本の赤ちゃんの出生体重は3000gを切り、なんと戦前より小さくなっています。1980年の平均出生体重が3200gでありましたが、その後はやせ細るばかりです。欧米ではデンマークのように3500gを超えている国も少なくない中、3000gを切るというのはかなり小さいことがわかりますね」
小さいとどのような影響があるのでしょうか? 「妊娠中に体重が増えないので、ママの出産時の負担が少なく、難産で赤ちゃんの心拍が弱まるなどのリスクが減ります。一方で出生体重が小さいと、体温が上手に保てないので、保育器に入ることがあります。そういった赤ちゃんは、哺乳力が弱いので少し飲んだだけで、疲れて寝てしまう。しかも、体内にぶどう糖をためておく力も低いので、ミルクの時間が遅れると命に関わったり、医療面での管理が必要です。赤ちゃんだけ退院できないことも多く、授乳のためにママは退院後、病院に通わねばなりません。また、出生体重が小さいほど、障害の発症リスクも高くなってしまいます。」
小さく産むことのデメリットは他にもあるそうです。「健康や疾病は胎芽(胎児の前)・胎児・新生児期に決まるという「DoHaD説(Developmental Origins of Health and Disease)」が世界で注目されています。お母さんのお腹の中の環境、なかでも栄養失調が、心疾患や高血圧症、糖尿病、高脂血症といった生活習慣病の発症率を高めることが世界中の研究により裏付けられつつあります。その結果として、生活習慣病になりやすくなるというのが、この説です」
細川さんが共同研究を行っている産院では、妊娠中の栄養教育に力をいれ、摂取カロリーを上げる取り組みをしているそう。「その産院で生まれる赤ちゃんの出生体重は、全国平均より高いのです。一部の産院ではまだ、小さく産もうと指導しているところもあるので、妊婦さん自身が知識をつけて、実践することが大切です」