子育て世代に起こりやすいトラブルの実例とその対処法を、弁護士法人・響の徳原聖雨弁護士に伺う人気企画。第12回目は育児中の労働についてのあれこれ。やっと保育園に入れて、いざ社会復帰!と意気込んでオフィスに行ったものの、仕事と育児の両立の厳しさに直面する機会も多いはずです。育児中の残業、転勤、降格などこれってアリ?!と読者の方々からの相談も寄せられました。

 CASE1 子育て中の深夜残業は拒否できますか。

Q. マスコミ勤務で、2歳の子を育てています。日々のニュースサイトの更新などで、どうしても深夜までの残業が発生してしまいます。本当は残業したくないのですが、異動などの希望が通りません。残業は拒否できるのでしょうか。また、母親と父親で違いはありますか。

A. 育児中の労働については、いくつか制限などがあります。今回はそのいくつかを見ていきたいと思います。

①所定外労働の免除

 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(以下、単に「法律」といいます)第16条の8にて、3歳に満たない子どもを養育する労働者が、子どもの養育のために請求した場合には、所定の労働時間を超えて働かせることはできないことになっています。

 労働者からの1回の請求につき、所定外労働の免除期間は1カ月以上1年以内で、何回でも請求できます。また、請求方法としては、所定外労働をしなくなる開始日の1カ月前までに手続きをする必要があります。

 もっとも、事業の正常な運営が妨げられるような場合(例えば、会社での重要なプロジェクトに欠かせない人物であり、所定外での労働が不可欠な場合など)には、請求をしたとしても、会社は拒否できることになっています。

 また、労使協定などで対象外とされている雇用期間が1年に満たない労働者などは、請求すること自体が認められません。

②時間外労働の制限

 いわゆる36協定にて労働時間の延長が定められていたとしても、法律17条によると、小学校入学前の子どもを養育する労働者が、子どもの養育のために請求した場合には、1カ月につき24時間、1年につき150時間を超えて、時間外労働を延長することはできません。

 請求できる期間、回数、手続きについては①と同じです。また、事業の正常な運営が妨げられる場合には、会社が拒否できるのも同じです。なお、雇用期間が1年に満たない労働者などは、請求すること自体が認められていません。

③深夜業の制限

 小学校入学前の子どもを養育する労働者が、子どもの養育のために請求した場合には、午後10時から午前5時までの間、労働させることはできません。

 請求できる期間、回数、手続き、事業の正常な運営が妨げられる場合は、①と同じです。

 なお、雇用期間が1年に満たない労働者などは、請求すること自体が認められていません。

 ①と②はよく似ている感じがしますので、ややこしいですが、①はざっくりいうと事実上の残業禁止だとご理解いただければいいかと思います。

 いずれも母親と父親で違いはありません。