アドラー心理学の“勇気づけ”を取り入れた子ども英語教室「A+SMILE」で、子どもたちの語学への興味ややる気を引き出している田中彩子さん。田中さんは現在小学校4年生の長女と3歳になる長男を育てる二児の母でもあります。子どもたちに異国の言語と日常との接点をつくり、英語嫌いだった子どももみるみる英語好きに変える3つのポイントについて聞いた前回に引き続き、今回は、田中さんが実際にレッスンや家庭で行う英語学習術をピックアップ。2歳から小学校入学直前までの4年間をシンガポールで暮らした長女は、帰国後日本の公立小学校に入学し日本語ベースで暮らしながらも、シンガポール時代に身に付けたバイリンガルの能力を保っているそうです。そして、長男も2歳から英語に触れ、自らの希望で英語の世界に親しんでいます。一体、どんな家庭学習を行っているのでしょうか?

(上) アドラー流 子どもを英語嫌いにさせない方法
(下) 英語を遊びに! アドラー流家庭学習のポイント ←今回はココ!

英語づけのシンガポール時代も、まずは母語の確立に力を入れた

 長女が2歳のときにシンガポールに引っ越した田中さん一家。4年間のシンガポール生活の中で、娘さんは最終的に英語で日常生活のほとんどを過ごすほどの語学力を身に付けました。しかし、当時、田中さんが一番大切にしていたのは英語教育ではなく、日本語の習得だったそうです。

 「わが家の場合、母語である日本語の確立が何よりも大切だと考え、長女は日本人の園長先生がいるモンテッソーリ教育の幼稚園に通わせました。転居してしばらくは家でも日本語でのコミュニケーションを大切にしていましたが、その園が英語・中国語・日本語のトライリンガル環境だったこともあり、英語で話すお友達も多く、その後インター幼稚園に転園し、だんだん日本語より英語が得意に。家庭でも英語を主体に話すようになりましたが、日本語で自分の意思を伝えたり、物事を理解したりできるように、家庭では日本語のフォローに力を入れていました。外国語を学ぶときは、母語で理解した事柄の後をすぐ追いかけるように外国語を習得していくのが理想。興味や言葉の理解が深まりやすいと思います。多民族国家であるシンガポールで、娘は最終的には英語のほうが得意になって帰国を迎えましたが、当時、家庭で日本語教育に重きを置いたことは良かったと思っています」

 当時、日本語力よりも英語力が上回っていた娘さんも、帰国して日本の幼稚園に転園すると、約2カ月で言語のベースが英語から日本語に逆転したそうです。

 「子どもはあっという間に新しい環境に慣れます。日本語を母語として重きを置いたことで、帰国後スムーズに日本の生活になじめたのは良かったのですが、自然に身に付けた英語も環境が与えたギフト。このまま失ってしまうのはもったいないとも思い、帰国後すぐに家庭で英語学習を始めました。それが私が英語教室を始めるきっかけでした」

 英検1級、TOEICベストスコア980、英語教授法TESOL(180hr)A1などネーティブ並みの英語力で、通訳・翻訳者としての顔も持つ田中さん。しかしそんな彼女も、初めて英語を学んだ中学生のときには、英語に苦手意識を持っていたと振り返ります。嫌いな英語が好きになり、キャリアの強みに変えた経験をもとに、田中さんが英語を教えるうえでもっとも大切にしている英語学習法。それは、何でしょうか。