親子で会話しながら危険シミュレーション

 子どもの身を守るうえでとても大切なのが、子ども自身に「いざというときの対応力」を身につけさせることです。「これはダメ、あれはダメ」とピンポイントに禁止事項を増やしていく防犯教育では、想定したパターン以外の状況になった場合に子どもが対応できません。犯罪を計画する者は常に“次の手”を考えています。いろんなパターンを想定しながら、どんな対策ができるのか、親子で一緒に考える時間をつくるようにしましょう。難しく考えず、普段の会話の中でこんなやりとりをしてみてください。

「もし、知らない人から『おじさんの車に乗らない?』って誘われたらどうする?」
「知らない人にはついていっちゃいけないんだよー。無視するよ」
「『オモチャで遊ばせてあげるよ』って言われても乗らない?」
「戦隊ヒーローのオモチャだったら、ちょっと遊びたいけど」
「この間テレビに出ていた新しいやつ? その戦隊ヒーローのオモチャが車に乗っていたとしたら?」
「見たい、見たい! ちょっとだけ窓からのぞいて見るだけなら大丈夫でしょう?」
「ダメだよ! 急にドアが開いて後ろから押されたら、あっという間に車に閉じ込められちゃうんだよ」
「そうか。こわーい」
「そう。だから、何を言われても、知らない人の車には乗っちゃダメ」
「はぁい」

 このように、子どもが気をゆるめてしまいそうな“隙”を考えながら、子ども自身が自分の頭で危険について理解し、納得できるように会話を進めていくのがコツです。子どもは素直だからこそ、「納得させる」ことがとても大切なのです。

 子どもの安全のためには、「知らない人の車に乗ってはいけない」という教えは徹底するべきですが、実際にその状況に遭遇したときに子どもは「断る」ことにちゅうちょしてしまうことがあります。「断ったら、怒られるんじゃないか」と不安になってしまうのです。この不安を払拭するために「断り方」も教えておきましょう。

 「お父さんお母さんから、『知らない人の車には絶対に乗っちゃダメ』って言われているから乗れないです」

 この言葉の用意があれば、子どもは自分の意志ではなく、家庭の教えとして断ることができるので、気持ちがラクになります。

 犯罪者の中には、「でも、僕はお母さんの友達なんだよ」と嘘をつく者もいます。子どもは「本当にお母さんの友達だとしたら、どうしよう。お母さんが怒られちゃうかも……」と迷うかもしれません。そんなときに備えて、「もし相手が本当にお母さんの友達で、嫌な気持ちにさせてしまったとしても、後からお母さんが謝りに行ってあげるから、あなたは何も気にせずに断りなさい」と伝えておきましょう。