新年度を迎え、お子さんが小学校に入学して新たな生活のスタートを切ったばかりという読者もいらっしゃることでしょう。「なんでも親と一緒」だった保育園ライフから卒業して、自分の力で学校に通ったり、放課後を過ごしたりする生活にチャレンジ! わが子の成長を実感する喜びをかみしめつつも、“子どもの安全”に対する不安でいっぱいという人は多いはず。そんな不安を解消するヒント満載の本が、その名も『子どもの防犯マニュアル』。著者の舟生岳夫さんは、子どもの防犯について10年以上研究をしてきたその道のプロフェッショナルです。「はじめての通学」「はじめての習いごと通い」「はじめてのケータイ」の3大テーマについてお伺いし、集中連載でお届けします。

 日経DUAL読者の皆さん、はじめまして。私はセコムIS研究所で、主に子どもの防犯について研究し、情報発信を続けている舟生と申します。もともとはエンジニアとしてセコムに入社したわけですが、子どもが生まれ父親としての人生が始まったことを機に、「どうやったら子どもの安全を守れるか?」というテーマを突き詰めるようになり、いつの間にか専門となってしまいました。学校や自治体から講習に呼ばれる機会もあり、地域や学校がどのような対策をとっているかといった最新事情についても自然と耳に入ってきます。

 子どもの安全をいかに守るか、というのは子育て中の家庭の共通課題だと思いますが、特に共働き家庭にとっては「子どもが1人になる時間が生まれやすい」という点で、より切実な問題です。また、片働き家庭のように「家にいる親(多くの場合は母親)に任せればよし」というわけにはいきませんので、夫婦の協力体制を築くことも重要です。子どもの安全をおびやかすリスクは、守る目が多いほど減らしていけます。ぜひこの記事をパートナーとシェアして家庭内で話し合うきっかけとして活用し、お子さんの安全対策に役立てていただきたいと思います。

安全面の“小1の壁”は「親子で通学路チェック」で対策

 いわゆる「小1の壁」には様々な要因があると思いますが、「子どもが無事に学校に行き、家に帰って来られるか?」という通学の安全面での不安も大きな要因ではないでしょうか。

 とりあえず毎朝ランドセルに防犯ブザーをぶら下げさせて、見送りができる場所までついていって送り出している……というお父さんお母さんは少なくないと思います。でも、「とにかく心配!」と漠然とした不安を抱えたままでは、何も解決しません。

 大事なのは、不安のもとを“見える化”すること。それも、“親子で一緒に”というのがポイントです。

 具体的には、時間のある休日などを使って、通学路を子どもと一緒にゆっくりと歩いて往復してみましょう。できれば、朝と夕方、実際に子どもが歩く時間帯にするのがおすすめです。

 公立小学校の場合、通学路というのは自宅から近隣の学校までの見慣れた道ということが多く、だからこそ「分かったつもり」になりがちです。でも、今一度、子どもの目線で、「危険はひそんでいないか?」という意識で歩いてみてください。夕方に暗くなる茂みや、交差点の死角、先月にはなかった工事現場の覆い、子どもがすっぽり隠れられそうな壁の隙間などなど、きっといくつもの発見があるはずです。

 加えて、子どもは「大人が想像しない行動」をとる天才です。穴があれば入りたくなり、音がすれば近寄りたくなる。子どもならではの豊かな好奇心は健全な成長を促すものですが、時に危険を呼び込むこともあります。一緒に歩きながら、子どもが興味を持ったところがあれば、その好奇心を受け止めつつ、「でも、近づいちゃったら、こういう危険もあるよね」などと教えてあげてください。

 通学路チェックは、親子の遊びのような感覚で気軽にやってみるといいと思います。「危険な場所探しゲームをしよう!」と子どもが楽しめるように誘って、大きな紙にルートを描きとりながら歩き、オリジナルの「通学路マップ」を作るのもいいと思います。「危険な場所」として挙げられるスポットは例えばこんなところです。

・高い塀や植栽で見通しが悪くなっている道路
・樹木が多く、外から中を見渡せない公園
・人けがない空き地
・いつもと環境が変わる工事現場
・侵入が可能な空き家
(※著書『子どもの防犯マニュアル』から抜粋)

 親子で通学路チェックをした後も、子どもの意識を定着させるために、時々「最近、通学路に変わったことない?」などと声をかけるようにしてください。親が何も言わなければ、子どもは「もう大丈夫なんだ」と安心しきってしまうかもしれません。

 また、あまりにも危険な場所が目立つ場合には、そのルートが本当に通学路に適しているかどうか、率直に学校に相談してみてもいいでしょう。

 不審者や交通事故のリスクをゼロにすることは不可能ですが、リスクを減らす努力はいくらでもできるのです。