5月6日(土)・7日(日)に開催される親子フェス「Hanno Green Carnival 2017 ~マナブ アソブ ツナガル~」(ソニーミュージックのキッズ専門ブランド「KIDSTONE(キッズトーン)」と株式会社Zepp ライブ企画制作)。駿河台大学(エリア ヤルヴィ)、あけぼの子どもの森公園(エリア ヨキ)という、埼玉県飯能市にある緑あふれる施設で、子どもと一緒に自然を感じながらコンサートやワークショップに参加できるということで注目のイベントです。

このイベントのワークショップの一つ、『アニメNEXT100』プロジェクト主催の「絵を描いて! 絵を動かす!! “アニメをつくろう”ワークショップ」(5月7日/11:00~12:30と14:00~15:30の2回)に登壇するのが、高校3年生の女の子のパパでもある遊佐かずしげさん。遊佐さんは『楽しいムーミン一家』『タッチ』『うる星やつら』『まんが日本昔ばなし』『トムトムブー』『おじゃる丸』など名だたるアニメを手掛けてきた2D&3Dアニメーション作家・演出家として活躍する一方、小学校から大学、さらには教師たちにも指導もする立場。また子どもたちのアニメ作品の審査員を務めたり、ボランティア活動にも力を入れていらっしゃいます。また、ご夫人はアニメーターの大島りえさんで、公私にわたり共同作業をすることが多いそう。

そんな遊佐さんに、ワークショップの楽しみ方から、アニメ業界や娘さんとの関係、そして夫婦関係についてまで、お話を伺いました。

幼稚園生だった娘に「パパはオタクなの?」と聞かれた

――アニメのワークショップは難しくないですか。

遊佐かずしげさん(以下敬称略):おっしゃる通りでアニメーションはちょっと難しいので、僕が教えるのはパラパラアニメと言われる数枚で動くような、皆さんがよくご存じのものになることが多いですね。たった2枚の絵で、ウサギが伸び縮みしているように見えたり、鳥が飛んでいるように見えたり、男の子が「わっ!」と驚かせているように見せたりすることができる。

 アニメは顔よりも大きい口を描いてもいいんだよというデフォルメを教えるなど、どういうことをやっていいのか、まずは型を外すことから始めます。すると子どもたちにもすんなり入り込んでもらえます。アニメの教室といっても、アニメを動かす方法を教えるだけではないんです。もっと基礎的なこと、原理を教えています。飯能でのワークショップでも導入は同様のものになると思うのですが、次にこの絵を見てください。

――トイレのマークですか?

遊佐:そう思いますよね。これをワークショップで一瞬だけパッと見せて「みんな知ってる? 何のマークだった?」と聞くと「トイレのマーク!」とすぐに答えます。ところが「どちらの形が女性だった?」と聞くと、見ている人たち、特に大人は「右でしょ!」と答える。でも色がピンクなだけで、女性の形をしているのは左なんですよね。アニメはこうした先入観を利用するものだということ。こうしたテクニックをはじめ、どんなスキルを身に付けてアニメーターはプロになるのかということを、基礎からしっかり教えます。こうしたキャッチボールを楽しんでもらって、苦手意識のある子のコンプレックスを取り除くことも目的の一つです。

――確かに、これなら絵が苦手でも楽しめそうです。でももともとはアニメ作家として活躍されていた遊佐さんが、なぜ子ども向けの活動をするようになったのでしょう。

遊佐:僕がこうした活動をするようになったきっかけは、今高校3年生の娘、くららが、「パパはオタクなの?」と幼稚園のときに聞いてきたことなんですね。「お友達の○○ちゃんのママが、くららちゃんのパパはオタクだって言ってたって」と。もちろんオタクは悪くないのですが、それを聞いて「アニメーターはオタク……なのか?」と思いまして。

 僕が事務所を構える練馬区は、東映が“東洋のディズニー”を目指して大泉の撮影所で、日本初の劇場用カラーアニメを制作をしたという、日本のアニメ発祥の地として今は知られるようになっていますし、練馬区も「アニメ・イチバンのまち」として様々な活動を展開しています。でも当時はまだ、手塚治虫さんが練馬区に虫プロダクションを構えて日本初の連続テレビアニメ『鉄腕アトム』を制作したことも、90社を超える(現在では100社を超える)アニメ関連会社があることも知られていませんでした。それどころか、アニメーションは漫画家さんが作っていると思っている方もいたくらいだったと思います。

 僕はもっと、アニメーションに携わる人たちのこだわり、ポリシーを多くの人に伝えていかないとと思うようになったんです。

遊佐かずしげさん。写真はNHK『みんなのうた』作画時のもの
遊佐かずしげさん。写真はNHK『みんなのうた』作画時のもの