妻とは仕事も家事も、完全に運命共同体
――本物に触れさせようということは意識してこられましたか。
遊佐:そうですね。博物館・美術館はもちろん、ロンドンの本場で『オペラ座の怪人』と『レ・ミゼラブル』を見てきたと話していましたよ。本物に触れさせ過ぎることが自信喪失など、逆効果になることもありますが、それも含めてもう高校3年生ですから「好きにしなさい、これからはもまれなさい」と思っています。グローバルな同世代の友達ができたことも父親としてうれしいです。
――考え方を押し付けたりはしないものの、お父さん、お母さんが何を見て、何をしてきているかということを感じているということでしょうか。
遊佐:反面教師というのも、ところどころあったのかなと思います。休みはほとんどありませんし…。今年に入ってから休んだのは今月1回だけで、正月から仕事をしていますから。
そういう仕事状況は、娘が1歳になる前に、自宅とスタジオを兼ね備えた大型マンションに住み始めたときから続いているので、「お父さんいってらっしゃい」というシチュエーションもなかったんですよね。仕事中でも娘がスタジオに入ってくるのは当たり前で。
そういえば、娘が3歳くらいのころは「勝手に入ってきちゃだめだよ、ノックして入るんだよ」と教えたら、「こんこん、入っていいですか? いいですよ」と返事まで自分でして結局入ってくるという、なんともかわいい姿を見せてくれていましたね。今や出来上がった作品を見て「いいじゃん、OK」と、ディレクターのように意見を出してくれるに至っていますが(笑)。
――お子さんを持たれたことで、仕事上、変化したことはありますか。
遊佐:僕が『おかあさんといっしょ』や『いないいないばぁ』(共にNHK)などのスタッフだったころに、娘がちょうど視聴者に当てはまる年齢でしたので、「娘が見たときに良いものを」という意識が強くなったと思います。もちろん、娘自身、この環境だからこその経験もしていると思います。『いないいないばぁ』の見学に行ったらワンワンが一緒に写真を撮ってくれたり、子役のりなちゃんがわが家に遊びに来たりしたこともあります。夢と現実の世界の落差を幼いころから見てきたことで、ある意味たくましくなっているかもしれません。
――ご夫人との関係はどうでしょう。お仕事も一緒にされていますが、家事負担などはされていますか。
遊佐:僕は洗濯もしますし、畳むのも得意で洗濯バサミも補充します。お皿も洗いますし、買い物も行きますよ。妻は同業者で今年20年目を迎えた『おじゃる丸』の第1話の原画を描いた人、第1話のアニメーターなんですね。そのころから運命共同体でやっていますので、お互いの苦労も知り尽くしているのかなと。様々なアニメーション作品で協力し合いながらやってきました。例えば『おじゃる丸』(NHK)のエンディングでは絵コンテは妻、撮影は僕が、『趣味の園芸 やさいの時間』(NHK)のタイトルは逆に色指定を手伝ってもらいました。そうやって仕事も家事も、完全に運命共同体でしてきている感じですね。
――そうした共同作業も、お子さんの成長には良い影響がありそうです。
遊佐:どうでしょうね。ただ僕らは良いものを作り続けるという方針を守ってきました。その姿勢は、子育てにも影響しているかなと思います。
(取材・文/山田真弓 撮影/小宮山裕介)