4歳になるひとり息子を、芥川賞作家夫婦で育てながら超多忙な日々を送る川上未映子さん。仕事、お金、子育て、美容。健康、暮らし、人間関係。しあわせやよろこびだけでなく、おそろしいこと不安なこと、そして思わず、びん詰めならぬゴン詰めたくなる世間のあれこれを綴ります。人気コラム『川上未映子のびんづめ日記』シーズン2、全16回でお届けする第10回目のテーマは、「子どもと社会」です。

 自己責任という言葉というか圧力が、いったいいつ頃からこんなに馴染みになったのかは定かではないけれど、それらが子育てにもがんがんに効いているのを感じない日はない。社会的な正しさと、ままならない現実に挟まれて、まるで気持ちはマンモグラフィー検査にあえぐ乳房のよう……今日もフレシネを飲んで考えた。

「子どもを社会で育てる」って具体的にどういうことなのか

 家庭内における夫婦のアンフェアネスについて是正を叫べば「そんな相手と結婚したのは自分」、子育てのつらさ大変さを吐露すれば「子どもを望んで生んだのは自分」というふうに、「自分で蒔いた種なのだから、文句言わずに対処しろ」──面とむかって言われることは稀でも、そのような視線を感じることは、少なくない。

 ときどき「子どもは社会のもの。みんなで育てる意識が大切です」みたいな、涙が出るほどありがたい言説に出会うこともあるけれど、しかし「子どもを社会みんなで育てる」というのが具体的にどういうことなのか、子どもを生んで5年経つ今も、これがまったくわからないのだ。

親にアウトドア的想像力が皆無なため、我が家の土日はもっぱら映画館、しかしこの日は何を観たのかもう忘れた。黄色い服を着せると、どこかへピューっと走って行っても目で追えるから重宝してます、便利です。
親にアウトドア的想像力が皆無なため、我が家の土日はもっぱら映画館、しかしこの日は何を観たのかもう忘れた。黄色い服を着せると、どこかへピューっと走って行っても目で追えるから重宝してます、便利です。