少子高齢化、人権、子育て支援など、今日本の社会が直面している諸問題について、NPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹さんが各界の専門家や政治家に切り込む本連載。今回は、生活保護家庭から東京大学に進学した現役大学生の島田さんに、“世帯分離”をして大学に進学した経緯やこれからのことを伺います。上中下3本の記事でお送りします。

■「中」編
生活保護と東大進学 発表まで生きた心地しなかった
■「下」編
現役東大生 僕を見捨てた大人と同じになりたくない

※インタビューは2017年3月に実施。この記事の内容は当時の状況や情報に基づいています。

生活保護家庭の子どもは世帯分離をしないと大学に行けない

駒崎 これまでのゲスト(塩崎厚労大臣・小池東京都知事等)と比較してぐっとお若いですね。島田君は今おいくつですか?

島田 ピチピチのはたちです。

駒崎 ピチピチですか! いいですねぇ。通っている大学は…。

島田 東京大学です。

駒崎 そうなんです。優秀で将来有望な大学生、島田君なわけですが、東大生というだけでしたら他にもたくさんいますよね。島田君が特別なのは、彼が生活保護家庭出身であり、いわゆる“世帯分離”をして東京大学に進んだという点です。

 制度的に「大学に入っちゃいけない」と規定されている生活保護家庭から超難関の東大に入ったことだけでもかなり稀少な存在ですが、さらに驚くべきなのが、島田君が進学を可能にする奨学金を得るために「本当は理系なのに文系で入試を受ける」というウルトラ技を成し遂げた。逆に言えば、そこまでしなければならない制度的欠陥を自らの体験として語れる人物である……ということなのです。ですよね?

島田 はい、そうです。

駒崎 今年の初め、僕がブログで「2017年にはぶっ壊したい、こどもの貧困を生みだす日本の5つの仕組みとは」と題して、「生活保護家庭の子どもは大学に進学できず、例外的に親と子が世帯を分離することで生活保護受給を継続することができる」という現状について吠えたところ、Yahoo!ニュースのトップ記事にもなり、バズりました。国会でも話題に上り、注目度が増したわけですが、ぜひ当事者の話を聞かせてほしいと思っていました。改めて、今に至るまでの経緯を子ども時代から遡って聞かせていただけますか。

島田 僕が生まれ育ったのは高知県のとある町で、物心ついたときから、家の暮らし向きは良くはないのだと感じていました。親が生活保護を受給し始めたのは、僕が中学1年生のときからです。両親が離婚しまして、母子家庭になったことがきっかけでした。

駒崎 なるほど。離婚の前から、お母さんは働いていたのですか?

島田 働いていました。基本的に家計はずっと母が支えていたのだろうと思います。

駒崎 話せる範囲でお願いします。お父さんは働かれていましたか?