中学受験をするなら公立中高一貫校か、近所のほどよい私立中へ

 とはいえ、公立中学を全面的にすすめているわけではありません。近くの公立中の評判が思わしくない、学校見学に行ったときの先生の対応がひどかったなど、行かせたくないケースもあるでしょう。

 そんなときは、小学6年生の1年間の受験勉強で入れるような中学を受験することをおすすめしています。子ども時代の遊びや読書、体験を極力減らさない作戦です。

 具体的には、公立中高一貫校を受験する方法です。受験問題を見るとわかるのですが、塾で知識を詰め込むよりも、それまでの読書量や体験の豊富さ、論理性、思考性などが問われる問題が主流になっています。つまり、ここに至るまでの家庭での教育力が問われるということになります。

 あるいは、1年間の受験勉強で入学できる程度の私立中学を受験するのもいいでしょう。ただし、英語と数学の授業が15人以下の少人数クラスでやっていること、家から近いこと、この2つが条件になります。

子ども時代の「時間」を無駄遣いしてはいけない

 遠い学校に通わせてはいけませんよ。時間がもったいない。

 現代社会でもっとも大切なものは、「自分自身のために使う時間」です。子どもであれば、遊ぶ時間であり、興味のある本を読む時間であり、ぼんやり夢想する時間であり、友達と話す時間であり、エネルギーを蓄える時間であるべきです。通学に時間を使うなど、本質的にナンセンスです。

 受験する場合には、この点を必ず考慮したほうがいいでしょう。

 念のために付け加えますと、私は塾そのものを否定しているのではありません。塾のやり方を精査することなく、「いいらしいよ」のうわさに流されて、子どもの貴重な時間を奪うことを懸念しているのです。

 わが子をしっかり観察し、この子にふさわしい教育とは何かを考えたとき、必要なことがおのずと見えてくるのだと私は思います。

「それは公立中学を選ぶということなんですか?」という質問が聞こえますね。それについては次回、お話ししましょう。

(取材・文・構成/神 素子 撮影/花井智子)