「公立高校では一流大学には入れない」イメージ戦略

 首都圏で中学受験がブームになった背景には、公立中学校の荒廃がありました。30年以上前の「荒れる中学」「校内暴力」の時代に始まり、いまも学級崩壊、いじめ、学力低下と公立中にはマイナスイメージがつきまといます。

 さらに1980年代以降の、都立高校の大学進学実績の低下も大きな要因です。「一流大学に入学することこそが、幸せな人生へのパスポート」と信じる人たちが、「とても公教育に子どもを任せられない」と思うようになったのです。ここ十年ほどで都立高校が復権したといわれていますが、東大合格者の多くが私立の中高一貫校出身者で占められていることに変わりはありません。

 それをうまく利用しているのが、受験産業です。

 一流大学に入るためには、一流の中高一貫校に入らなくてはいけない。そのための情報もノウハウも、塾がすべてもっている。そんなイメージを作り上げました。

 なかでもアピール力があるのは「当塾から〇〇中学合格者〇名!」という合格者の数です。毎年2月の新聞の折り込みチラシ、すごいですよね。スーパーの「白菜98円!」と同じノリで「〇〇中学・合格〇人!」とアピールしています。親としては「この塾に入らないと、〇〇中には入れない。ってことは将来〇〇大学に入ることもできない」と言われているかのようです。