「幼いうちから英語に触れさせれば、将来英語に困らない子になるのでは?」。そう願って、英語教材やCDを与えたり英会話教室に通わせたりしても、逆に英語嫌いになってしまう子がいるのはなぜでしょうか?

 アドラー心理学の「勇気づけ」を使った子ども英語教室「A+SMILE」を主宰している田中彩子さんに、子どもが英語を好きになるような関わり方を聞きました。親の関わりによって子どもは英語好きに、さらに育児も楽しくなるという一石二鳥の学習法とは? 家庭での英語学習や親の関わり方のヒントが満載です。

(上)アドラー流 子どもを英語嫌いにさせない方法 ←今回はココ!
(下)英語を遊びに! アドラー流家庭学習のポイント

英語嫌いになった子も、英語が好きになる! アドラー流勇気づけ英語学習法

 「子どもに合わない英語教育で英語が嫌いになってから、うちの体験教室にやってくる子がたくさんいるんです」という田中彩子さん。中目黒で、昨年の9月から3歳からの英語教室を主宰しています。田中さんは、6年間の海外生活や翻訳者としてのキャリアで身に付けた英語のスキルに加えて、アドラー心理学を取り入れた英語の学習法により、子どもたちが楽しみながら学ぶ意欲を引き出していますが、英語嫌いになった子どもたちには大きく分けると2つのパターンがあるといいます。

 ① オールイングリッシュの環境に長時間置かれていたケース
 ② 親だけが熱心になりすぎているケース

 ①のオールイングリッシュを売りにしている英会話学校やクラスは、最近増加傾向にあります。親としてはつい、年齢が低いうちにネイティブの英語をシャワーのように聞かせておけば、耳が英語に慣れて自然と覚えられるのでは、と期待してしまいますが……。

<b>ELM勇気づけリーダー、英会話スクール講師 田中彩子さん</b>。4年生と3歳の「6学年差育児」を楽しむ2児の母。図書館で偶然出会ったアドラー心理学の育児法に魅せられ、アドラー心理学の講座を続々と受講。4年間のシンガポール滞在中には、長女を現地のモンテッソーリ幼稚園に。2013年帰国後は、心理学をベースとした「ELM勇気づけリーダー」の資格と、英語教師としての国際資格TESOLを取得し、ひとりひとりを大事にする子ども英会話教室A+SMILEを主宰
ELM勇気づけリーダー、英会話スクール講師 田中彩子さん。4年生と3歳の「6学年差育児」を楽しむ2児の母。図書館で偶然出会ったアドラー心理学の育児法に魅せられ、アドラー心理学の講座を続々と受講。4年間のシンガポール滞在中には、長女を現地のモンテッソーリ幼稚園に。2013年帰国後は、心理学をベースとした「ELM勇気づけリーダー」の資格と、英語教師としての国際資格TESOLを取得し、ひとりひとりを大事にする子ども英会話教室A+SMILEを主宰

 「ネイティブの先生によるオールイングリッシュ環境は、子どもによって向き不向きがあると思います。例えば、週3回3時間という英語環境に子どもを通わせた場合、英語がある程度理解できたり、母語がまだおぼつかなかったりする子どもにとっては違和感が少ないでしょう。でも、日本語が母語として確立している4~5歳や小学生がある日を境に、突然理解のできない英語環境の中で長時間を過ごさないといけないというのは、それだけで苦痛に感じる場合も少なくありません。

 また、本来コミュニケーションのツールとして楽しむ異国の言語であるのに、『理解できない時間が多すぎる』ということは、ある意味、学ぶ意欲が下がってしまい逆効果。レッスンに参加できない状況が長く続くと学習の意味がないですよね」

 親としては「慣れればそのうち…」と期待してしまいますが、子どもに興味がないにもかかわらず、日々理解ができない言葉を聞かされ続けると、「外国語に親しむ」という大切な導入段階でつまずいてしまうかもしれません。

 ②のケースにも通じますが、「親からの『英語を学んで』というプレッシャーを感じて、その熱意に負けてしまい、英語嫌いになる子もいます」という田中さん。

 「子どもの人生の主役は、子ども自身ですよね。私も小4と3歳の二人の子どもがいて英語に触れさせていますが、子どもの気持ちを尊重することを忘れないようにしています。親が子どもに英語を学ばせたいからといくら頑張っても、本人のやる気なしでは、なかなか身に付きませんよね。親はあくまで子どもの興味や進行具合を、“勇気づけて”あげる役割。サポートや伴走をする立場で、英語に自然と興味を持つ機会を提供し、『やってみる?』『興味があったら一緒にやってみようか』と、意思決定は子どもに任せるというアプローチがいいのではないでしょうか」

 親が子どものやる気を引き出す「勇気づけ」とは、アドラー心理学をベースとした考え方。田中さんはこの「勇気づけ」をはじめ、アドラーの唱える様々な心理学的要素を英語のクラスでも活用し、子どもたちの英語を学ぶ意欲を引き出しています。次のページからは具体的にその手法を見ていきましょう。