人工知能の発達や社会構造の変化で、親世代が進学・就職したころとは、求められる職業に変化が出ています。子どもが進路を選択するとき、一人で食べていけるようにアドバイスできる自信はありますか? 統計データを使って、子育てや教育にまつわる「DUALな疑問」に答える本連載。第44回は進路と求人倍率の関係についてです。

 

2017年、人材が求められている職業は何か

 こんにちは。教育社会学者の舞田敏彦です。皆さんのお子さんもやがて大きくなり、社会の中で役割を果たすことを求められるようになります。何らかの職業に就くことです。はて、今の社会ではどういう職業の需要が高まっているのでしょう。

 それを測る指標として、有効求人倍率というものがあります。全国のハローワーク等で貼り出されている有効求人数を、求職している人間の数(有効求人数)で除した値です。簡単にいうと、求職者1人につき求人(仕事)がいくつあるかです。

 人手不足が深刻な介護サービス業でいうと、2017年1月時点の常用(パート除く)の有効求人数は11万2780で、有効求職数は4万33ですから、有効求人倍率は2.82となります(厚労省『一般職業紹介状況』)。求職者1人につき、およそ3つの働き口があるわけです。常用パートに限ると、この値は5.03に跳ね上がります。人件費の安い非正規雇用の口が多いためです。なお、常用とは、雇用期間の定めがないか、4カ月以上の雇用期間の定めがあるものをいいます。

パートとフルタイムで有効求人倍率を計算

  57の職業について、常用(パート除く)と常用パートの有効求人倍率を計算してみました。それをグラフにすると、社会の職業需要の構造が浮かび上がってきます。横軸に常用(パート除く)、縦軸に常用パートの有効求人倍率をとった座標上に57の職業を配置すると、図1のようになります。図では、常用(パート除く)を「常用フルタイム」と言い換えています。

警備員、医師、建設関連、サービス職は人材を求めている

 保安職が右上にありますが、多くは工事現場等で交通誘導を行う警備員でしょう。現場には一定数の警備員を置かないといけないのですが、必要な人数の確保に難儀している現場が多いと聞きます。

 お医者さんも求人倍率が高く、フルタイムが7.43、パートが5.13となっています。医師不足が深刻な地方では、値はもっと高いと思われます。

 復興需要や五輪需要もあってか、建設関連の職の需要も多いですね。建設躯体業のフルタイムの求人倍率は8.43で、求職者1人につき8つの仕事があることになります。これはスゴイ。また図の左上をみると、飲食店等の接客・給仕や介護サービス職の求人倍率が高いことも知られます。この業界の人手不足は、嫌というほど報じられているところです。

サービス職はパート、建設業はフルタイムを求めている

 大まかにいって、建設業とサービス業に対する需要が多いようですが、前者はフルタイム希求型、後者はパート希求型というようにグルーピングできます。斜線より下にある職業はフルタイムの求人倍率がパートより高く、上にある職業はその反対です。

 建設躯体や測量技術等は有資格の正社員が欲しいところですが、該当する人がなかなか見つからない。こうしたミスマッチにより、フルタイムの求人倍率が跳ね上がっているとみられます。左上のサービス職やドライバーの場合、安価なパートが望まれているのですが、待遇の悪さのため人が集まらない。おおかた、こういう構図でしょう。