子育ても仕事も“人ごとではない”という共通項

—— 子育てをシッカリしながら仕事もできるという意味では、子育てと仕事における共通項などありますか?

高橋 実は僕の経歴は変わっていて、すし屋の息子だったので、高校を卒業したら、父親から「すし屋を継げ」と言われていたんですね。だから、卒業後はすし屋を継ぐべく、父親のもとで2年間、修業していたんです。

 ところがある日突然、「町のすし屋には未来がないから、おまえ、何か他のことやったほうがいいんじゃない?」って言われて……。「おい、オレの2年間はどうしてくれるんだ!」と(笑)。それで1年間、浪人して大学に進学しました。3浪ということになるので、なかなか就職も厳しかったのですが、縁あって今の会社に入社することができた、という変わり種です。

 自分自身がそういった特殊な経緯の人間であることが影響しているのか、仕事や子育てに関してはもちろんのこと、何ごとも“決めてかからない”タイプだと思います。

 あまり先入観を持ったり、こうあるべきだということは考えたりせず、そのときの自分がどう思うか、どの位置にいるのか、どう感じるのかといったことを大切にして、フレキシブルに対応するようにしています。そこは、子育も仕事も同じです。

—— 仕事も子育ても同じ姿勢で臨んでいるということですか?

高橋 子育ても仕事も“人ごとではない”ということですね。子育てにおいては、自分の子どもを立派にしてあげたいと思う。少しでも体力をつけてほしいとか、賢い子になってほしいとか。そのために親はどうすればいいのかと考えつつ、一生懸命に人を育てようとしているわけです。その感覚が、部下を育てることと相通ずるものがありますよね。

 ところが、そこを別モノと捉えている人が多いと思うんですね。ちょっとデキの悪い部下がいたとして、その部下をどう動かそうかと思案するとき、僕は、息子が何かに夢中になって頑張ったときのことを思い出します。

 何を言っても言うことを聞かなかったのに、ちょっとおバカなことを言ってみたりして私に気持ちを引き寄せておいてから、大事な話をする。そういった、子育てをするなかで培ってきた感覚というのは、仕事でも使えることが多々あります。

 子どもは少し無理をさせることで成長があると言いましたが、それは、部下を育てるうえでも同じなんです。やはり、緩くしてばかりだと、それ以上のところに行けませんから。でも、少し無理をさせると、成長できることもありますから。

 そのことに気づいたのは、ある部下に難しい課題を課したところ、急に伸びたことがあったからです。なかなか細かい仕事ができなかったのですが、ある番組で「5分枠のところをやってみなよ」と言ってやらせてみたところ、うまくやってのけたんです。その後、部下は、どんどん頭角を現していきました。

 そういう意味では、部下には、少し難しいと思えることであっても、やらせてみたほうがいいこともあるのではないかと思っています。当然、子どもも同じで、少し無理かなと思うようなことでもチャンスを与えてあげるのが、親の役割として重要なのではないかと思います。