子どもを授かって大きく変わった夫婦の関係
── 結婚当初から家事を分担していたというわけではないのですか?
高橋 子どもがまだいないころは、2人だけの世界。一緒によく飲みに行ったり、音楽が共通の趣味だったので、ライブに行ったり、家では大音量で音楽聞きながら乾杯したりと、それなりに楽しい毎日を送っていました。そのころ、僕は子どもはいてもいなくても、どっちでもいいと思っていたんですね。
ところが、なんか、やっぱり、子どもが欲しいなあ、と思うようになったんです。なぜなら、自分の父親のことをふと考える機会があったからです。
よく覚えているのは、小3くらいのとき、父親に買ってもらったばかりのグローブを無くしてしまったときのこと。絶対に怒鳴られるだろうなあと思ったのですが、何も言わず、一緒に捜してくれました。結果的には見つかったのですが、そんな感じで、職人気質なんだけれど、子どもに対しては絶対に怒鳴ったりしない、優しい父親でした。
── 父親のことを考えているうちに、子どもが欲しいと思うように?
高橋 そうですね。子どもが欲しいと妻に言って、しばらくしてから授かることができました。妻が妊娠している最中は、子どもができる前と変わらず、夫婦仲は良かった。ところが、生まれた瞬間から少しずつ、2人だけの関係性が薄れていっちゃったんですよね。
子どもが生まれた直後、僕はどうしていいのかわからず、見ているだけといった状態。多くのパパがそうかもしれませんが、どうしても男性って子どもが生まれた直後って何をどうサポートすればいいのか、わからないじゃないですか。
一方、妻は働きたいのに働けない状態が続いている。仕事をセーブしたままだと、フリーランスだから仕事を失ってしまうかもしれないという不安のなかでストレスが溜まっていく。そんな妻の姿を目の当たりにしていて、「このままじゃ、いけないな」と。
家事だとか、子どもを育てていくということに関して、父親としてもっと積極的に関わっていかないといけないと、どこかで思い始めたというのがありました。
妻の問いかけが大きな転機に
── 私を含め、多くの新米パパがそうだと思いますが、奥さんの姿を見て、何か意識の変化があったということですね。
高橋 息子が1歳くらいになると、今度は僕のほうが子どもにばかり意識が集中するようになっていきました。
それまでは、妻とだけ向き合っていたのに、子どもが生まれたことによって、子どもがメーンになってしまった。そんなころにふと、妻が聞いてきたんです。
「私と子ども、どっちが大切だと思う?」って。
一瞬、考えたのですが、「同じくらい大切だよ」と答えたところ、妻は黙り込んでしまった。自分としては、ちゃんと答えたつもりでした。その後も何度か話をしてみて、気づきました。
確かに、愛する息子は妻が産んでくれたし、妻がいなければ息子は生まれなかった。だから、一番、大切にしないといけないのは妻なのかもしれない、と。だから、今は、「両方大切だけど、キミのことが一番、大切。だって、子どもを産んでくれたからね」と、堂々と言えます。
それ以来、妻のことを最優先に考えながら、大切に子育てをしようと思うようになったというのが、大きな転機だったと思います。