起業するまでの経緯や仕事と家庭の両立についてなど、多くの壁を乗り越えてきたママ起業家や社長にインタビューする「私が壁を乗り越えたとき」。第8回は、ママの就労支援事業を展開している株式会社LIFULL FaM(ライフル ファム)の代表、秋庭麻衣さんを紹介します。

 秋庭さんは、社内事業プランコンテストで優勝したことをきっかけに、2014年に株式会社LIFULL FaMを立ち上げ。現在は、子連れで出勤できるオフィスで仕事をしながらWebマーケティング分野でスキルアップができる場を運営しています。自身も子育てをしながら会社を経営し、女性が働きがいを持って活躍できる社会の創造を目指しています。

 前編「周りより早い出産・子育て キャリアのプラスに」に続き、今回は育休を機に起業した経緯や、子育てと社長業との両立について紹介します。

子育てもママが働くこともプラスなのに、両立が困難な世の中はおかしい

 育休を1年間取得し、職場復帰を果たした秋庭さん。育休に入る前は当然戻るつもりだったけれど、育休から戻るときは、不安を感じたそう。

 「子育てをやってみたら、予想以上に子どもに手がかかる一方、予想以上に子どもがかわいくて離れたくなかったですね。また、自分の前に子育てしながら働いているママがいない状況で、かつ、かなり忙しい職場だったので、本当に子育てしながら働いていけるのか、不安になりました」

 そのときの不安が今の仕事にもつながっているといいます。

 「周りの働くママ友に聞いてみても、やはり両立は大変と言っていて、仕事を辞めている人も多かった。子育てすることもプラスで、ママが働くこともプラスなのに、その2つのプラスを両立することが困難な世の中はおかしい。仕事と子育てが両立できる社会にしたいと思いました」

希望して人事担当に。社内の子育て支援制度を立案

 まずは足掛かりとして社内の制度を整えたいと思い、営業ではなく、人事を希望して職場復帰をしました。

 「社内で育休復職者第一号だったこともあり、今後社内で出産をする人が私と同じように不安に思うのであれば、その人たちだけでも不安に思わないような会社にしていきたい。それが気持ち良く育休に送り出してくれた会社への恩返しになるのかなと思いました」

 職場に戻り最初に行ったのは、社長に挨拶に行き、人事制度を改革するプロジェクトメンバーを募ったことでした。

 「ネクスト(現LIFULL)を子育てと仕事が両立しやすい会社にしたいから、制度を整えたいと社長に言いました。それから自分が育休中に考えたことを全社員にメールし、賛同してくれる人に集まってもらいました。それが、今の子育て支援制度『ワーキングマザー・ファザー支援制度』につながっています」