トラブルを解決・回避するために必要な情報とは

 そこで、冊子をつくるために、改めてお母さん方にインタビューすることになりました。しかし、やってみると、あまりうまくいきません。

 確かに、お母さん方は素晴らしい子育てノウハウを持っています。でも、ただお話を聞くだけでは、それがうまく引き出せない。お母さん方は「どうやって解決したか」ということは話しますが、「どうしてそういう状況になったのか」「それによって何が問題になったのか」ということは、あまり話しません。それは、そうですよね。だってご自身にとっては当たり前のことなのですから。

 とはいえ、ノウハウをまとめるに当たり、「どうしてそういう状況になったのか」「それによって何が問題になったのか」「どこにポイントを置いて解決しようとしたか」ということは大切です。例えば、「子どもが病気になったとき、仕事をどうするか」と聞くと、「親に預ける」「病児保育に預ける」「仕事を休んで子どもを見る」など、色々な声が返ってきます。

 このことを冊子にそのまま書いたとしても、きっと読者は「預けられる親が近くにいればいいけどさ……」「子どもを優先したいのはやまやまだけど、大切なプロジェクトを任せられたら、そうもいかないし……」と、困ってしまいますよね。

 トラブルに対する対応を細かく見ていくと、そこには固有の状況があり、価値観がある。それぞれの要素が絡み合い、その中から最適解を見つけ出さなければなりません。そのためには、やっぱり「どうしてそういう状況になったのか」「それによって何が問題になったのか」「どこにポイントを置いて解決しようとしたか」が必要です。

 そこで、お母さん方をインタビューする際、パターン・ランゲージなるものを使ってみようということになりました。

 パターン・ランゲージとは、ある状況のもとで起きやすい問題と、それを解決するポイント、具体的な方法を、誰が見てもすぐに分かる形で記載するための手法です。

 『日々の世界のつくりかた』には、パターン・ランゲージを使ってインタビューした「働くママの成功事例」が全部で34個書かれています。冊子の内容は、花王の「くらしの研究」ホームページから無料でダウンロードできます。