「こどもみらい園」を訪問し、子どもや保護者たちと交流

 来日中、ウィリアムズ監督は発達障がいの子どもたちが通う施設を訪問しました。個別学習塾「東京未来大学 こどもみらい園」を訪れた監督は、授業を見学しながら、子どもたちと触れ合ったそう。保護者たちとのトークセッションでは「自閉症をはじめとした脳の障がいと見なされていたものは、脳の個性である」という考え方を説明し、意見交換が盛り上がったそうです。

 訪問の感想を伺うと、「本当に楽しかったです! 学園もすてきでしたし、子どもたちもすごくかわいくて。とてもポジティブなメッセージを持った環境だと思いました。保護者たちは非常に子どもたちを理解していて、子どもとつながりたいと考えている人ばかりでした。『ぼくと魔法の言葉たち』を見てくれた保護者たちと実際に会って、話をすることができたのですが、この映画を通して、ロンとコーネリアがしてきたことに大きなインスピレーションを感じてもらえたようでした」と、笑顔で答えてくれました。

 『ぼくと魔法の言葉たち』を見た保護者や講師の方のアンケートから、コメントを抜粋してご紹介します。

 「素晴らしい映画でした。子どもの歩んできた道と重なる場面がいくつかあり、涙が出てきました。自閉症を知らない大勢の人にも見てもらいたいと思います。(中略)本人の自立をサポートする支援が充実すると良いと思います」(保護者)

 「(映画ではオーウェンが大学卒業後に介護者付き支援ハウスで一人暮らしをし、映画館でアルバイトをして自立を目指すが)日本では、とても限られた範囲の選択しか与えられていないと感じます。普通学級でついていけない子どもは、特別支援学校や特別支援学級に行くことを勧められますが、本人に適合しているかでなく、普通学級からの排除的な印象です」(保護者)

「発達障がいを持っている人が、どのようにしたら生きやすくなるのか、どうしたら自立した生活が送れるのか手探り状態でもあり、固定化された障がい者枠での就労が正しい道としている現実があると思います。グループホームでも大規模で安定的運営は少ないそうです」(保護者)

 「日本には、“かわいい子には旅をさせろ”という言葉がありますが、映画を見てその言葉を思い出しました。たくさん愛を注いで、そして巣立たせる…。それは、すべてのお子さん、子育てに共通していると改めて思いました」(施設職員)

 オーウェンの暮らすアメリカと日本とでは、子どもの自立に対する考え方や支援に大きな違いがあることを痛感しました。『ぼくと魔法の言葉たち』は、親として子どもをどう導くか、どのように自立の道を見つけさせるか、といったことを考えさせられる映画です。

『ぼくと魔法の言葉たち』
4月8日 シネスイッチ銀座ほかにて全国順次公開予定
(C) 2016 A&E Television Networks, LLC. All Rights Reserved.
配給:トランスフォーマー
公式サイト:http://www.transformer.co.jp/m/bokutomahou/

(取材・文/清水久美子 ロジャー・ロス・ウィリアムズ監督分撮影/杉 映貴子)