難関中学に合格した子は、雑然とした環境を好んで勉強していた
初めて子ども部屋をつくるとき、風通しが良く十分な採光の明るい部屋づくりを意識し、南向きの一番いい環境を選ぶ家庭も多いでしょう。小学校中・高学年になるにつれて、空間の居心地の良さに加えて学習面を伸ばす環境づくりもより気になってきます。実際に難関中学に合格した子たちのリビングや部屋づくりはどのような工夫がされているのでしょうか。
「難関中学に合格した子たちの家や勉強環境を見てみると、“風通しの良い南向きの明るい”個室でコツコツ勉強するというのとは逆の環境にある子が多かったんです。多くの子が片付いた子ども部屋ではなく、比較的雑然とした環境を好んで勉強していました」と話すのは、難関中学に合格した子どもたちの家の調査を基に書かれた「頭のよい子が育つ家」(文春文庫)の著者である東京電機大学の渡邊朗子准教授。渡邊さんは、受験を控えた高学年の子どもたちに共通した学習環境について解説します。
高学年は、自分で勉強をするようになりつつも、完全には独立しきれない年齢。中学受験を目指す場合も、親の協力や志向が子どもに大きく影響します。そこで、高学年の部屋づくりを考えるうえで、重要となるのが「安心感」。勉強することは、頭にプレッシャーやストレスをかける作業。「だからこそ、安心できる環境が必要であり、家族が集まるリビングやダイニングなどを勉強場所に選ぶ場合が多い」と渡邊さんは言います。
「例えば、リビングにテキストや参考書だけでなく地球儀などの教材、最後には自分のベッドまで持ってきてそこで勉強していて筑波大学附属駒場中学に合格した子がいました。他には、卓球台を家のダイニングテーブルにしてしまい、そこでみんなが食事から勉強までしてしまう栄光学園に合格した子の家もありました。他の子たちも、勉強道具をリビングのテーブルに持ってきたり、ちゃぶ台を出して勉強したりと、比較的騒がしいと思える親が家事や作業をしている近くで勉強していたのです」
渡邊さんが調査した中で多かったのが、リビングでなくても、リビングとの間に開閉式の間仕切りがある部屋など親の気配が感じられたり、生活音が聞こえたりする場所を好んで勉強している子。空間が独立していても、空気や部屋が家族の共有スペースとつながっているといいようです。
次のページからは、こうした家族とのつながりを感じる学習環境が子どもにどのような影響を与えるか、掘り下げて聞いていきます。