重症ならホルモン補充療法をファーストチョイスに

 更年期障害が重度になると、薬物療法が行われます。武田さんによると「世界標準の治療法は、ホルモン補充療法です。閉経すると、女性ホルモンの分泌が減り、その結果症状が出るので、女性ホルモンを補充するのです。ホルモン補充療法では、エストロゲン製剤と、副作用を抑えるためのプロゲステロン製剤を併用します。エストロゲンには更年期障害を改善するだけでなく、骨量を増やしたり、肌を美しくするなど、アンチエージングとしての働きもたくさんあります」。

 「更年期障害への治療効果は高く、これに勝るものはありません。しかし、日本ではホルモン治療に対してネガティブなイメージが根強く、そんな怖いものを、とおっしゃる方も多いです」と武田さん。その結果、日本のホルモン療法の普及率はたったの1.7%。56%に達しているオーストラリアとは大きな差です。

 「ホルモン補充療法により、冠動脈疾患や乳がん、静脈血栓症、脳卒中などは確かに増加します。しかし、5年間は乳がんの発症率を増やさないので、5年を一つの目安として考えてみるといいのではないでしょうか。日本産科婦人科学会などでもホルモン補充療法を治療のファーストチョイスとするのが最新の考え方となっています」。

漢方は精神症状が得意

 漢方でも治療ができます。漢方薬には更年期障害に使えるものが10種類以上あります。漢方では「心身一如」(こころと体は一体のものである)の考えを基本とし、心身の症状を一緒に直すという考え方で、どちらかというと精神症状がつらい人向きの治療法です。西洋医学の治療と併用することもよく行われています。

女性の活躍推進には更年期障害への社会的認知が必要

 更年期やPMSについてはいまだにタブー視されていて、職場で話をすることはほとんどないのではないでしょうか。 症状がつらくても会社に打ち明けられず、キャリアに影響が出てしまうのが日本の現状です。

大塚製薬 ニュートラシューティカルズ事業部 女性の健康推進プロジェクトリーダーの西山和枝さん
大塚製薬 ニュートラシューティカルズ事業部 女性の健康推進プロジェクトリーダーの西山和枝さん

 今回のセミナーを主催した大塚製薬 ニュートラシューティカルズ事業部 女性の健康推進プロジェクトリーダーの西山和枝さんによると、更年期障害やPMSがあるために、昇進に影響があったかアンケートを取ったところ、6割が「辞退したことがある」、「辞退を考えた」と答えたのだそう。これでは、女性の活躍推進どころではありません。

 最後に質疑応答があり、その場でも「学校教育などによって、更年期やPMSが社会全体で認知され、職場や学校でオープンに語れる雰囲気を作ることが必要です」と重ねて述べた武田さん。参加した女性たちも大きくうなずき、セミナーは終了となりました。

(取材・文/日経DUAL編集部、撮影/花井智子)